コロナウィルス騒動によってウィルスの感染を恐れ不要不休な外出を控える傾向になり、余暇の過ごし方にも変化が起きているみたいですね。
自分は読書が一番の趣味なので家に引きこもっても全然問題無いのですが、外出好きの行動派の方々はストレスが溜まるかもしれません。
私の母も、婦人会の活動や旅行、趣味のお茶や大正琴の習い事、が中止になってちょっとがっかり気味。
まあ、母は読書も趣味なので家に閉じこもっても大丈夫だろうけど、この閉塞感が長く続くと外出大好き行動派の方々の中には、心の健康も損なう方が出るのでは?と少し心配です。
閑話休題
さていつも通り本の紹介に行くとしましょう。
本日紹介する作品は、
和田はつ子 著 雛の鮨 料理人季蔵捕物控 です。
それでは、いつものようにあらすじ紹介から・・はじまりはじまり~
【 あらすじ 】
時は江戸。江戸日本橋にある料理屋塩梅屋の主人・長次郎が大川端で遺体で見つかった。
知らせを聞いた長次郎の娘おき玖と塩梅屋の料理人季蔵は、長次郎の遺体が運び込まれた番屋に駆けつけるが、長次郎の遺体には首の後ろに刺された痕が見つかったのにも関わらず、奉行所の役人は自害だと結論付け探索を行おうとしない。
やる気のない役人の態度に失望し怒りが治まらないおき玖と季蔵は、下手人は自分達で探すと決意する。
長次郎の通夜の席、夜も更けた頃、長次郎の遺体を安置した塩梅屋に北町奉行烏谷椋十郎が密かに弔問に訪れる。
「何故、北町奉行ともあろう方が市井の料理屋の主人の弔問に来るのだ?」疑問に思う季蔵に烏谷は長次郎の抱えていた秘密と自分との関わりを語るのだったが・・・
【 解説 】
①この作品の著者は、和田はつ子さん!
この作品の著者は、和田はつ子さん、1952年生まれの東京都出身の〇〇才ゲフンゲフン。 『よい子できる子に明日はない―現代優等生気質』でデビュー。この作品が橋田壽賀子脚本のテレビドラマ『お入学』の原作となり注目される。以後ノンジャンル、サスペンス、時代小説の作品多数が刊行されているベテラン作家さんです。
②この作品は江戸時代のお江戸を舞台とした長編時代小説の捕物話
この作品は、江戸時代の江戸を舞台とした長編捕物時代小説作品である『料理人季蔵捕物控』シリーズの第一巻です。
③元侍の料理人の季蔵が主人公!季蔵が侍を捨て料理人になった理由とは?
この作品の主人公は江戸日本橋にある料理屋「塩梅屋」の料理人・季蔵が主人公!
季蔵は元侍だったが、訳在って仕えていた主家から出奔、仕事もなく飢えそうになっていた所を塩梅屋の主人・長次郎に拾われ塩梅屋の料理人として鍛えられる。しかし突然の長次郎の死で店を任される。
そんなある日塩梅屋に、元の主家の若殿から季蔵宛に出張料理を請う文が届けられる・・・ 果たして季蔵が侍を捨てた訳とは?
④季蔵は彼の恩人である塩梅屋の主人・長次郎の秘密のお役目を引き継ぎ、事件の謎解きに挑む
長次郎の通夜の席、北町奉行の烏谷は、温厚な料理屋の主人であった長次郎には秘密のお役目を持っていて密かに烏谷に仕えていた事を知らされる。
そして長次郎の死は、そのお役目に絡んでの事であること。
そして今の江戸では、金や地位で幕府高官や奉行所の役人を動かし自らが行っている悪事が表沙汰にならないように工作して罪を免れる悪党共が世間には跋扈している事。
そんな隠れ悪党の事を探り、時には罰を与える秘密の探索役を季蔵に引き継いでもらいたいと烏谷に要請される。
果たして季蔵の返事とは・・・
【 感想 】
江戸時代の小料理屋を舞台とした飯テロ話&人情噺に捕物噺をプラスしたというこの作品は、昨今、本屋の時代小説のコーナーで良く見る「江戸時代の小料理屋を舞台とした人情噺系作品」とは一味違うテイストの作品です。
小料理屋の主人である主人公は、元侍で哀しい過去を背負っています。そんな主人公は普段は季節ゝの旬の食材を生かした料理を客に饗する誠実な男、しかし影では江戸で起きている事件の真相を密かに暴く隠れ探索者というワクワク設定の物語。
第一巻であるこの作品では、上記の設定に関わる事件&主人公の恩人でもある塩梅屋の主人・長次郎の謎の死に絡むエピソードがこれでもかこれでもかと目白押しで夢中になってあっという間に読み終わりました。
なるほどこの作品は、今までの江戸の料理屋を舞台としてきた飯テロ話・人情噺作品とは一味違う。
既存のそういう作品には、時おり捕物話的エピソードも挿入されていたりしますが、この「料理人季蔵捕物控」シリーズは、その題名通り捕物話・事件の謎解きの方がメインという、小料理屋が舞台の時代小説としては珍しい作品。
もちろん季節の旬の食材を使った美味しそうな料理は、作る工程も含めて客に饗されるまで描写されていますし、小料理屋を舞台とした店の者と常連客の温かいやり取りなど人情噺的なパートも存在しますが、やはり小料理屋の主人・季蔵が市井で起きている事件を密かに探索するという「捕物噺」のパートの方に重点が置かれています。
そこら辺の事件の謎を追うワクワク感については文句ない!
しかし読み終わるといささかしっくりこない。気持ち良くない。なんでだろうと考えてみますと、以前当ブログでも紹介している小料理のどか屋人情帖シリーズなどの小料理屋人情噺に漂っている「人と人との繋がりや人情の温かさ」や「美味しい料理を食べて口福の面持ちになっている客の様子に読者がシンクロしてホッとする気分」の要素がかなり減り、その分、「事件の裏に潜む人間の狡さや醜さ、哀しさ」を見せつけられる事にあいなります。
そこら辺の相反する要素の内、後者の部分の方が多いために、沸き立つ幸福感が大幅にスポイルされ、いまいち気分が乗り切れなかったのかなと思う次第です。
特に第一巻である本巻では、この作品の設定上大事な主人公と元許嫁の悲しいエピソードが影を落とし幸福感が大幅マイナスしています。
次巻以降で多少でも読後の幸福感が上がっていくのか?それとも殺伐とした暗い雰囲気が読後を覆い気が滅入るのか?次巻も是非読んでみようと思います。
江戸時代を舞台とした捕物噺・謎解きミステリーとしてはおもしろくワクワクするが、飯テロ噺・人情噺としては物足りない&読後感が悪い!というこの作品、興味が湧きましたら是非読んでみてご感想ください。
ということで本日はここまで!じゃあまたね!
※当ブログ記事には、イラストACさんを通じていちずさん、ランブリングマンさんのイラストが提供されています。
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