予てから、葉室麟さん原作の散り椿が岡田准一さん主演で映画化されたということで観たいなと思っていたところ、DVD化されたのでTUTAYAで借りて観てみました。

 

本日は、映画『散り椿』の紹介&感想をお送りしたいと思います。

【基本データ】

 

2019年8月公開 配給・東宝

監督&撮影・木村大作  脚本・小泉堯史

キャスト

爪生新兵衛   岡田准一

瓜生篠      麻生久美子

榊原采女    西島秀俊

坂下里美    黒木華

坂下藤吾    池松壮亮

石田玄蕃    奥田瑛二

篠原三右衛門 緒形直人

 

【あらすじ】

 

時は江戸、藩の実権を握る守旧派の家老・石田玄蕃と改革派で成り上がり者の側用人・榊原采女との間で権力闘争が起こっている小藩の扇野藩に、かつて上司の公金横領の不正を訴え出たにも関わらず藩を追われた瓜生新兵衛が突然帰ってきた。

 

藩政の主導権を握る守旧派の家老・石田玄蕃(奥田瑛二)

成り上がり者の改革派の側用人・榊原采女(西島秀俊)

 

新兵衛は、公金横領をしたとされる榊原源之進を斬ったと噂される男。「そんな男が何故今頃になって藩に帰ってきたのか?」家老の玄蕃を含め、扇野藩の藩士たちは疑心暗鬼の中、戦々恐々。

 

そんな中、病に倒れていた藩主・親家に代わって嫡男の政家が藩主となることに決まり、新藩主着任までに権力を完全に手中にしておきたい家老の玄蕃と側用人の采女の間の権力闘争は更に激化していくのだが・・・

 

藩を追い出された後、病弱な妻・篠を抱えひっそり市井に生きる新兵衛

死期を悟り、「自分が亡くなったら、故郷の実家に咲く散り椿を見に行ってほしい」

「元婚約者だった榊原采女を助けてあげてほしい」と新兵衛に願う篠

「・・・それよりもひとつだけ訊いておきたいことがあるのだが」

「なんでございましょう」

「わしはそなたに苦労ばかりさせて、一度もよい思いをさせたことがなかった」

「そなたの望みを果たせたら、褒めてくれるか」

「お褒めいたしますとも」

妻亡き後、男は妻の遺言をかなえるために故郷に帰る!

 

【解説】

 

① 原作から省いたり改編した部分がかなりあった。

 

映画は時間の関係もあろうがかなり原作から省いたり改編した部分がかなり多く見受けられた。

 

例1

原作では、亡くなった新兵衛の妻・篠の妹・坂下里美は、藩の公金横領を疑われ自害した坂下源之進の妻で、藤吾は彼女と源之進との息子なのだが、映画版では、源之進、篠、里美、藤吾は兄妹弟の関係となっている。

 

設定変更で藤吾の「姉」となった篠の妹・坂下里美(黒木華)

今をときめく側用人の榊原采女に憧れを持つ坂下藤吾(池松壮亮)

突然舞い戻った厄介者の新兵衛を嫌うのだが・・・

 

例2

映画では家老・石田玄蕃VS側用人・榊原采女の藩内の権力闘争のみが描かれているが、実は原作では石田玄蕃の背後にさらなるラスボスが存在する!お家騒動絡みの部分もカット。それに絡み藩主直属の影組織・蜻蛉組なる組織の存在もカット。

 

例3

原作では石田玄蕃を誅するのは榊原采女なのだが、映画版では、石田玄蕃とその手下達を誅するのに榊原采女と瓜生新兵衛二人で行おうとする。

 

② カメラマン出身の木村監督の映像美が美しい!

 

元黒澤組でカメラマンをしていた監督さんらしく美しい映像。セット撮影無しの全編オールロケで撮影されたこの映画は、日本の四季の移り変わりの美しさと共に侍映画の美と緊張感、空気感を存分に味わえる。

 

 

③ 岡田准一、西島秀俊さんのキレッキレの殺陣が凄い!

 

岡田准一さん演じる新兵衛、西島秀俊さん演じる榊原采女。「四天王」と評された剣の強者らしさを訴える殺陣がかっこいい!殺陣は「派手さを抑え無駄を廃して剣速を重視したある意味スピード感、軽快感を感じる演出の殺陣」で迫力があります。

 

散り椿の前で剣を交わらせる新兵衛と采女

新兵衛役の岡田准一さんのキレッキレの殺陣

 

【感想】

 

①原作読みにとっては物足りない感がある。

 

原作を読んでいる者にとっては、ストーリーの改編によって話が単純化されたのには、物足りなさを感じた。ただ映画としては一見でストーリーを観客に判らせなければいけないので、話を平易にしたのも納得はできる。

 

②カメラマン出身の監督だけに映像が美しくチャンバラ系映画として過去作品と比べても十分上位だと思う。

 

ここでも言ってしまう。もう画が綺麗、解説で書いた様に日本の四季の移ろいと自然の風景、侍映画として作り込まれた映像の緻密さは秀逸!

全編オールロケで屋内シーンも由緒ある古い屋敷を借りて

四季の移ろいと共にある人間描写

小道具まで緻密に描写された下級武士の暮らし

 

③画は綺麗!だが内容にものたりなさ感が・・・映画からは原作ほどにお互いを思いやる夫婦愛、若侍の成長、友情、侍社会の権力闘争劇、事の真相に行き着くまでのミステリー感、というものを感じなかった。正直原作を上廻れなかった。

 

予告編を観て、原作も読んでいた私は、期待感をかなり持ってこの作品を観たのだが、ハードルを上げすぎたのか、期待していたほど高揚感が得られなかった。いや、もちろんお互いを思いやる夫婦愛、若侍の成長、友との友情、侍社会の権力闘争劇がきちんと描けている。描けているのだが・・・「なんだ、この物足りなさは・・・」「予告編の映像だけで十分だったな!」などと感じてしまった。

 

 

④原作通り、坂下藤吾目線で物語を展開していれば?

 

原作では、父親の公金横領の罪で失った家禄を取り戻すために出世を目論見、家老石田に付くか、采女に付くかで、悩む日和見で風見鶏な軟弱系な若者だった藤吾目線で話が進み数々の体験で一本芯が通った逞しい青年に成長していく様が良かったのだが、映画ではその点も少々弱く感じた。

 

⑤ストーリーの改編でラスト付近が良くある展開に・・・

 

原作を改編してストーリーを変えていて、最後に家老一派を退治するために采女と新兵衛二人で殴り込みに!待ち構えていた家老一派をばったばった。しかし采女が・・・怒りの新兵衛は家老一派を討ち果たす。そして事が終わってトラブルメーカーの新兵衛は藩を去っていく!見送るヒロイン!って良くある見飽きたパターンだよね。がっかり!殺陣は良いけど、話としては平凡だったかな。原作の方が良いなぁ・・・

 

⑥一番言いたい新兵衛の妻・篠の事は次回のブログにて。

 

散り椿に関して、新兵衛の妻の遺言について思う所があるのですが・・

それは次回の原作「散り椿」の紹介にてお話したいと思います。

 

追い詰められた玄蕃は新藩主・政家暗殺まで実行しようとする。

そこで、家老石田玄蕃一派の元へ殴り込みに赴く新兵衛&采女

鬼強の二人の行く先には・・・

一件落着後、藩を去る新兵衛。新兵衛に思慕の念を持ち引き止める里美

藩を出て何処かに去る新兵衛。

 

ということで、本日は映画「散り椿」を観た感想なんかを書かせていただきました。

 

次回はたぶん、原作「散り椿」の紹介になると思います。

 

ということで本日はここまで、じゃあまたね。

 

 

 

 

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