昨今、アポ電強盗なる、振り込め詐欺の手法に強盗を掛け合わせたハイブリッド型犯罪がニュースを賑わしています。
振り込め詐欺は事例の研究が進むにつれ警察・金融機関などが対抗策を次々と打ち出して金の回収がし難くなってきました。そんな中、振り込め詐欺グループも手法を変化させ、最初行っていた「銀行口座への現金振り込み」から「受け子による現金の直接受け取り」に、そして遂に、家に現金を用意させておいて自分達が直接強盗に入るという荒っぽい行為へとエスカレートさせてきたというわけです。
これらの振り込め詐欺から進化した荒っぽい手法の登場により、被害者のお金だけではなく一歩間違えれば自分の生命をも失う可能性が出てきたという事で、最初の電話を取る前からの対策(留守番電話・ナンバーディスプレイ対応電話の設置、等)や電話を取った後からでの対策(周囲の人への相談、警察への連絡・相談)でもいいですから、用意・対策を行っていく事が大切だと思います。
閑話休題
ということで、アポ電強盗のニュースを聞いていて、紹介する作品が頭に思いついたので発表しようと思います。
その作品は?
雫井脩介さんの『 犯人に告ぐ2 - 闇の蜃気楼 』です。
豊悦主演で映画にもなった大ヒット警察小説!『 犯人に告ぐ 』の続編!
一体どんな話なのか?いつも通りあらすじのの紹介から行くとします。
【あらすじ】
神奈川県警が威信をかけて解決した「バッドマン事件」より半年。
事件解決の立役者である巻島史彦警視は、野心家の県警本部長・曾根の元で「刑事特別捜査隊」の捜査指揮官として腕を奮っていた。
近々の刑事特別捜査隊は、県警捜査二課や各所轄署刑事課との連携の元、近年世間を賑わしている「振り込め詐欺」グループの摘発に汗を流し、つい最近も、社本率いる振り込め詐欺グループを摘発して成果を上げていた。
そんな最中、地元の老舗洋菓子屋「ミナト堂」の社長とその息子の親子二人が誘拐される事件が発生!野心家の曾根県警本部長は、子飼いの巻島をこの誘拐事件の捜査主任に任命!刑事特別捜査隊をこの事件の専属班とした。
巻島は早速山手署に捜査本部を置いて県警捜査一課特殊班、県警捜査支援室、山手署刑事課、の面々を集め捜査を開始する。
しかし、その直後、ミナト堂社長・水岡勝俊が開放されるという不可解な行動が起こる。
犯人側の不可解な行動に困惑する捜査陣!
果たして前例の無い身代金誘拐事件を巻島達神奈川県警の捜査陣は解決し誘拐された社長の息子を無事取り戻せるのか?
【解説・感想】
○ この作品って、どんな作品か?
神奈川県警を舞台に、かつて誘拐事件で自分のミスで人質の子供の命を救えず左遷されていた男が、野心家の県警本部長の命で復帰させられ、世間を賑わす未解決連続幼児誘拐殺害事件の解決を命じられ、マスコミを利用し捜査指揮官でありながらテレビに出演し犯人に語りかけながら捜査を進めていく「劇場型捜査」で犯人を追い詰めていく捜査陣と犯人側の攻防を描いた「犯人に告ぐ」という警察小説の続編で、前巻の事件の半年後のお話です。
「犯人に告ぐ」は、2007年、豊川悦司主演で映画化もされているから観てみるのもいいね。
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犯人に告ぐ [ 豊川悦司 ]
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○ 主人公は?
今回も、過去に犯した失態により心に大きな傷を持ちながらも、その償いから事件捜査に邁進する巻島警視が主人公です。
でも、物語的には犯人側の一人、知樹も物語の最初から彼の目を通してこの事件を描いているので、もうひとりの主人公かもね!
○敵はだれ?
犯罪組織の裏で、犯罪計画の立案&指南役を行っている淡野(※偽名だけどね)だよ。
○ 文(作品)の特徴は?
作品は主に、
1.犯人を捕まえ人質の奪還を目論む警察側・巻島視点!
2.警察を出し抜き身代金をせしめたい犯人側の一人・知樹目線!
3.犯人逮捕や身代金を取られる事なんかどうだってもいい、息子さえ帰ってきてくれるなら・・・と息子を誘拐されたミナト堂社長・水木勝俊!つまり被害者目線!
の主に三者からの目線で書かれているよ!
この三者の目線から書くことで、群像劇的なスケール感も出ているし、各キャラクターの考え方や心の動きとかがうまく語られているんだ。
そして、前巻の「犯人に告ぐ」は、捜査指揮官たる主人公が「捜査指揮官がテレビに生出演し犯人を挑発したり語りかけしたり」とかなり奇抜な捜査手法を使って捜査を行っていましたが・・・
↓
今回は主人公たる巻島も前巻の型破りな手法をとるわけでもなく、従来通りのオーソドックスな捜査手法や人海戦術で犯人に迫っていきます!
つまり地味って事ね!
前半から後半の初めまで、両者の知恵比べの時間がゆっくり流れていくよ。でも最後は、あることがきっかけで怒涛の展開!時間の流れが急に速度を上げラストまで目が離せない!
この時間の流れのコントロールが素晴らしいと思うね!
○ 【感想】 前巻「犯人に告ぐ」と同じくらいおもしろいの?
1.解説にも書いたけど、前巻の型破りな捜査手法と違って、今回の警察側は従来通りのオーソドックスな捜査手法を取っていて、わくわく感が薄いね!
そして今巻では、捜査現場に巻島を追い落とそうとする警察側のライバルもいないし
曾根本部長からは「成果をあげよ」とのプレッシャーは浴びせかけられるけど
前巻ほど、切迫感や焦燥感もなく「おもしろい」とは感じないかも!ここマイナスね。
2.それに対して、営利誘拐を仕掛ける犯人側の方が明らかに「おもしろい!」
↓
「いかに警察を翻弄して安全に身代金を手にするか?」ということに知恵を絞り、腐心している様には、いつしか惹きつけられ、肩入れし、応援している 自分を発見しました。
特に犯人側の知恵袋にして指揮官である淡野の考え抜いた策略と筋読みをゲームの様に考えている様だったり。犯罪で金を稼ぐことに罪悪感を感じない乾いた心を持つ今時の若者像を見事に書ききっているのが良かった。ここプラスね。
3.前半から後半初めまでは、犯人側と警察側の知恵比べがじっくり描かれ時間もゆっくり流れていく。しかし後半ラストに警察側のちょっとした配慮と運の天秤が警察側に傾いたことで、犯人側は大ピンチ!逃走へと時間の流れが急に加速し怒涛の展開へ!この文章による時間の速度のコントロールが見事。ここプラス!
でっ結果。途中退屈と思ってしまう箇所も存在したが作品全体でみるとおもしろいと思う。おすすめします。
興味あれば是非手にとってみてください。
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