うー寒い。こりゃまた強い寒気が入ってきて、昨日は普段雪が振らない私の地元でも雪が降ってきましたよ。

こういう時は体調に気を使って風邪なんぞひかないように気をつけなくちゃいけませんね。

 

風邪といえば、今インフルエンザが猛威を振るっていて自分の職場でも何人かがかかってしまい戦力ダウンで大変!

東京では駅のホームから転落し電車にひかれた女性がインフルエンザの患者さんだったとか。かわいそうですねぇ。

 

責任感で出勤したのか?それとも会社側が無理矢理こさせたのか?判りませんが、風邪にしろインフルにしろ体調が悪いのに無理して仕事にいくなんて駄目ですよ。他の方にうつしてしまうかもしれませんしね。

 

えっ上司や会社がうるさいって!そういうブラックな会社ありますねぇ。体調が悪い人を無理矢理出勤させても良い仕事なんてできないし、他の方に風邪やインフルエンザとかを移して蔓延させる事にもなりかねないのに・・・こういう時は有給休暇の消化も兼ねて3日でも4日でも休ませる方が労働基準監督署対策にもなるので良いんですけれど・・・どこにも馬鹿な上司とかいますからねぇ・・・

 

閑話休題

 

さて、いつも通り本の紹介へ戻ります。

 

本日は、澤田ふじ子さんの代表作たる時代小説シリーズ「公事宿事件書留帳」より第十七弾!遠い椿を紹介するとしましょう。それではあらすじ紹介から行きます。

 

 

【あらすじ】

舞台は江戸時代後期の京都。京都町奉行所の同心組頭の嫡男に生まれながら弟に家を譲って出奔し浪人者となり全国をさまよい歩いた末、京都に舞い戻り公事宿「鯉屋」の用心棒兼相談役として居候中の田村菊太郎。日々鯉屋に持ち込まれる面倒極まりない厄介な揉め事をその思慮深さと抜群の剣の腕前で解決していくのだった。

 

遠い昔、娘の頃駆け落ちに失敗し生き別れた男の面影を感じさせる野菜売りの娘。そんな娘から予期せぬ話を聞いたお蕗は・・・

 

「貸し腹」「小さな剣鬼」「賢女の思案」「遠い椿」「黒猫」「鯰大変」 六話連作小説

 

 

 

【解説・感想】

 

・この作品は江戸時代後期の京都を舞台にした澤田ふじ子の人情時代小説。

 京都市在住の著者が時代小説では珍しい京都を舞台として描いた時代小説で氏の代表作とも言える作品。二十二巻完結。

 

・一話完結のお話六作の連作小説だということ。

一話毎完結する連作小説なので連続した長い読書時間が取れない方も一話毎読めば満足できる。

 

・公事宿に居候中の浪人・田村菊太郎が主人公。

主人公は京都町奉行所の役人の家柄に長男として生まれたが妾腹のため心優しい正室が産んだ弟に家督を譲るため、わざと無  頼を気取り馬鹿をやった挙げ句家を出奔、浪人に・・・、全国をさ迷い歩いた挙げ句、京都に舞い戻り父親の知り合いである公事宿「鯉屋」に居候  になっている。弟は町奉行所の役人に。

 

「公事宿」とは、町奉行所に訴訟事で地方からやってきた人達の長期滞在用の宿で、弁護士事務所や事務代行会社も兼ねている。

 

・今も昔も変わらない、色や欲、人間関係のもつれなどの理由で理不尽な犯罪に巻き込まれる人達。そんな彼らを、その思慮深い機知と抜群の剣の腕前で救う主人公と仲間達。

今も昔も変わらず、日々真面目にこつこつと働き生きている善良な人々が、色や欲、人間関係のもつれが原因で悪い奴らに虐げられている。そんな人達を主人公の菊太郎と公事宿の人達が知恵を駆使して救う勧善懲悪系の人情話で概ねラストは良い終わり方。

 

・耳に優しい京都弁の会話が人情話をより良い雰囲気に!

時代小説では珍しい京都が舞台のお話の為、当然会話は京都弁に。男女身分に関わらず優しく聞こえる京都弁の台詞回しは、物語全体に独特の優しい雰囲気を醸し出している。

 

・じわーっと心に染みてくる滋味深い人情話がすばらしい!

主人公は剣の達人だが、物語を解決するのに荒事で済ます事は少なく。知恵を駆使した相手とのやり取りで示談で終わらせる事が多い。

とても良く練られた滋味深い人情話の数々には、現代の家族や職場での人間関係の問題に似たお話が多々あり、その解決に関するものの見方には現代の自分たち周辺のトラブル解決のヒントになる事もしばしば。

 

そしてしばし登場する賢者的な人物の振る舞いと行動に感動を覚える。

 

 

 

・ネタバレだがこの巻の好きな話を紹介!「賢女の思案」

ある日、公事宿・鯉屋に、大店の呉服問屋「笹屋」の娘・お加世がやってきた。

 

お加世は来春同業者の息子と祝言をあげる事になっている。

しかし実は自分は笹屋の本当の娘ではなく店先に捨てられていた捨て子で、自分はどこの誰の子とも判らぬ存在なのか不安。

このもやもやとした曖昧な気持ちのままでは嫁にいけない。

育ての親には悪いが自分の身元と実の親を探して欲しい。

 

と頼み込んできた。

 

お加世の頼みを聞いて早速調べにかかる菊太郎。

すると奉行所保管の書類には、確かに笹屋の店先に女児が捨てられていて笹屋の女主人・伊勢が養育を申し出て許可された事になっているのだが、その整い過ぎた文章に疑念を抱いた菊太郎。

 

笹屋の女主人・伊勢に密かに会おうと一計を案じる菊太郎。

策が講じて伊勢に接触できた菊太郎、料理屋の離れで伊勢から加世の生まれの秘密を打ち明けられる。

 

話によると、加世は今は亡き笹屋の主人・七右衛門と公家の元用人の娘・お高との間に出来た不義の子で、お高は実家を援助してくれた七右衛門の立場を考えて一人長屋に住み娘の加世を育てていた。

 

しかしある日、そこに放蕩者の弟・富之助が現れ、「加世の男親は誰か?金持ちなら脅して食い潰してやる」と迫ってきた。

 

お加世の父が大店の主人・七右衛門だと知られれば富之助はどんな強請りをかけてくるか判らないと一念発起して恥を忍んで伊勢に相談を持ちかけたお高。

 

話を聞いた伊勢は一計を案じ、お高に幼いお加世を笹屋の店先に捨てさせ、その子を笹屋の子として育て、子を捨てさせたお高には富之助から身を隠すために京都の都から離れた瀬田で茶店を営まさせ生活の面倒をみる企てを考え実行した。

 

話終わった伊勢は菊太郎に娘が明年嫁ぐ前に娘・加世と瀬田の方へ日帰り旅をしたいので供を頼みたいと願うのだった・・・

 

 

 

この「賢女の思案」では、菊太郎は完全な狂言回し的立場で存在感が薄く、主人公は伊勢になっている。

賢女の伊勢の存在感が大きい!

 

伊勢は、主人亡き後、女の身でありながら大店を切り回し、お加世の兄で四代目七右衛門の代になって江戸に支店を開く程店を流行らせている。

元気で闊達かつ思慮深く、指導力、カリスマ性抜群!だからといって偉そうぶることなく掃除でも店の者に混じり自らが率先して厠の拭き掃除をするほどの働き者。

 

「扱ってるのが呉服どすさかい、お客さまは買い物に長居しはります。手洗いの御用をおもうし付けになるのもたびたびどすわ。そのとき、花でも活けてある、きれいな雪隠を使うていただいたら、ああ、この笹屋を贔屓にしたろと思うてくれはりまっしゃろ」

 

「この世の中にはええお人と悪いお人が半々いてはります。そやけどどれがええお人でどれが悪いお人かわからしまへん。なんかの事情でそれがころっと入れ変わる場合かてありますさかいなあ」

 

「それに人の妬みや怨みというもんは、ほんまに強おす。自分にとってええことは、人には妬まれんように決して軽々しく明かしてはなりません。反対に人の具合が悪いことや不幸は迂闊に話題にするものではありまへんえ。」

 

「また人間の繋がりは親子兄弟という血で結ばれているのではありまへん。人間はこの広い世の中から自分と同じ考えを持ち共に暮らせるお人とめぐり合うて夫婦になったり友達になったりしていくんどす。血が繋がっていたかて考え方や生き方が違うてたら親でも子でもありまへんのや」

 

店での食事は主の家族も奉公人も同じ物を同じ場所で一堂に食べるなど身分差なし。

 

そんな女主人に店の奉公人は一同感じ入り忠節を尽くそうと団結していて先代亡き後伊勢が店を継いで商いが大きく伸びたほど。

 

伊勢の思慮深さの源は、目付けの娘として育ち、様々な揉め事とその結果を見続けてきたから。

 

それは自分の夫が密かに別の女と理無い仲(わりない仲)になって子を作っていたと知っても、ぐっと堪え思慮深く物事を考える。

 

身の破滅を回避し最善の道を探る賢者である伊勢。

 

七右衛門の立場や親族の絡みや世間体をも考えて伊勢とお高は決断する。

 

お高は最愛の娘の行末を考え、二度と会えない覚悟を決めて京を離れて一人暮らしを!

 

伊勢は妾が産んだ子を自らの娘として育てる覚悟を!

 

伊勢の覚悟の厳しさには涙&絶句!

お加世を引き取ってから懐妊する度にここでもし女の子が生まれたらその子を可愛がってしまいお加世の事をないがしろにしてしまうのでは?との疑念と不安から二度堕胎したという件は壮絶。

 

闊達で完璧な女の内にある苦しみと悲しみに・・・(TдT)

 

主人公菊太郎も顔なし。今巻では各話の関係者の人物に魅力的な人が多かったように思いました。

 

 

ということで本日はここまで!じゃあまたね!