ここ一ヶ月、上田秀人の作品に嵌まりそればかり読んでいる。爆  笑

もちろん以前にも上田秀人の作品を読んではいたのだが、一作ちょこっと読んでは他の著者の作品へ、またちょこっと読んでは別の著者の作品をと、なかなかシリーズを通して読む機会が無かったのだ。ニコニコ

 

で、先月始めくらいに、奥右筆秘帳シリーズを読み始めてど嵌まりビックリマーク次々巻を重ね、全て読破ビックリマーク続いて表御番医師診療禄シリーズも概ね読み果たし、続いてこの勘定吟味役異聞シリーズに取り掛かった。口笛

 

で、「勘定吟味役異聞」シリーズの第一巻を読み初めて、っ!っと読み止まった。びっくり

 

「奥右筆秘帳シリーズ」「表御番医師シリーズ」に比べて内容の密度が荒いのである。完成度が低いのである。あれっ上田作品にしてはそれほどおもしろくないぞと思って読み進めていったら・・・ ここからは、一度あらすじ紹介を終えてからあらためて語ろうと思う。

 

【あらすじ】

 

突然の兄の死で、旗本五百石・水城家の家督を継いだ水城聡四郎ビックリマークニコニコ

 

家を継いで三ヶ月、無役であった聡四郎が突然城に呼び出されると勘定吟味役に抜擢された。びっくり

この人事は、六代将軍・徳川家宣の寵臣で懐刀である新井白石の進言によるものだった。ニヤリ

新井白石は五代将軍綱吉専制政治で狂った幕府財政の立て直しの為、自分の手足として働かせるべく「誰の色も付いていない」彼を抜擢したのだった。ニヤリ

 

しかし幕府の「金」に関わる事なら、男子禁制の大奥へ立ち入って調べを進め不正を正す事ができる勘定吟味役だったが、聡四郎は「勘定筋」と呼ばれる「筆」の家筋のながら算勘が不得手で「剣術」が得意ビックリマークえー

 

何をどう見て何をしたらいいのか判らない聡四郎。えーん

 

自分の部下になってくれた勘定吟味役改の太田彦左衛門の勧めで仕方がなく幕府の普請工事の現場周辺をぶらつく聡四郎。口笛

 

しかしその行動は、普請工事の仕組みを悪用し莫大な利を懐にする材木商・紀伊国屋文左衛門、幕府財政を取り仕切り莫大な公金を懐に入れる勘定奉行・萩原近江守重秀、隠居したものの未だ幕政に影響を与える前大老にして幕政の闇の黒幕・柳沢吉保らには目に障るものだった。ガーンムキー

 

果たして聡四郎の前に現れる刺客の姿!果たして聡四郎の運命は・・・グラサンガーン

 

【感想】

江戸時代の幕府の様々な役に付いた主人公達の目を通して幕政における権力闘争を描く一連のシリーズの初期作品といえるこの勘定吟味役異聞シリーズ。ニコニコ

 

時は六代将軍徳川家宣の時代。つまり歴史の教科書で聞いたことあるでしょう「生類憐れみの令」犬公方、綱吉さんの後の将軍さんの時代。びっくり

 

出てくる有名人は、これまた歴史の教科書に載っている新井白石さん、他にも歴史好きならお馴染みの「綱吉さんの寵臣」柳沢吉保江戸時代の大商人紀伊国屋文左衛門など豪華な布陣。これらの方々がどう絡んでくるのかがおもしろい。

 

悪党共の策略、刺客のオンパレード。迫力の剣戟シーン。おきゃんで可愛い町娘も登場!緻密で詳細な時代考証。もう江戸時代を舞台とした大エンターテイメント。って褒め過ぎか!そうこのシリーズ出だしはそこまでおもしろいとは言えない感じだ。

 

自分が本格的に上田秀人作品を読み始めたのは、奥右筆秘帳シリーズからで、上田秀人作品の完成度の高さ、おもしろさにはうなるほどだ。だがそれ以前に書かれた本作品を読んでみると、どうも著者の筆がさぐりさぐりといった印象だ。てへぺろ

 

主人公も算勘が苦手で、勘定役の仕事をしたこともないので、書付があっても何をどう読むのか判らない?経理の実務経験も知識も無いのに会計監査役を任命されたようなもの。仕事になるわけがない。えーん

 

幸いベテランの経理役(勘定役)が自分の下に付いてくれたので、多少のヒントを与えられたが、それでも幕政の仕組みや仕事の流れが全く判っておらず、ただ幕府が普請した公共施設の付近をうろついているだけ。口笛

 

幸い、江戸随一の人入れ稼業相模屋の主・伝兵衛の娘・と知り合い。表裏も無く、町人に侍だぞと威張るわけでもなく、気性真っ直ぐで素直な主人公を気に入ってくれて普請仕事の仕組みや金の流れを教えてもらえたのはラッキーで都合が良い展開過ぎる。口笛笑い泣き

まあ、それは話の都合上の事だが、基本主人公はちょっと疑念が生じた場所の周りをうろつくばかり。口笛

 

これで幕政の仕組みの裏をついて金を儲ける&横領する悪共が、主人公の能力を過剰に評価して刺客を送り込んでくる!グラサン

 

そして刺客を得意の剣術で撃退した主人公が、うろついていた場所を舞台に「悪い事」が起きていたと判断するという次第だ。ニヤリ

 

この「勘定吟味役」という文系の仕事のスキルじゃなく、「剣術」という「武系のスキル」である力で相手を屈服させ話を聞き出すスタイルが気に入らない点だ。ムキー

 

いや殺陣シーンはおもしろいし迫力満点で良いんですよ。びっくり爆  笑

 

でも勘定方のスキルで「悪党」を追い詰めていくスタイルが欲しかった。ショボーン

 

実は二巻の巻末に著者の「あとがき」があり、そこで著者は「江戸期の経済を調べていくうちにそれを書いてみたくなった」「自分は江戸時代の経済について全くの素人だったので、どうせなら主人公を通じて勉強してやれと考えて・・・」などと記していて、なるほどだから現代における経理職である「勘定方」のスキルのない主人公を誕生させ、怪しい場所をうろうろさせるだけだったのかと、腑に落ちました。びっくりニヤリ

 

一巻では本当に「ずぶの素人」であった主人公が、巻を増す毎に仕事(役に)に付いた大人の男として成長していく様は、不安定で未完成なものが一人前になっていく喜びを感じられますし、その後、奥右筆秘帳シリーズなどの傑作を送り出していく著者の作家としての成長をも楽しめる感じがしてこのシリーズは良かったと思います。ニコニコ

 

先に作家として油の乗り切った絶好調な著者が書いた作品を先に読んで、次に著者の作家としての初期の作品を後に読むスタイルは、自分はあまり行った事はなかったのですが。

こうして「著者の作家としての成長していく様を確認していく楽しみ」を味わえるならこれからもこのスタイルで読んでみようか!とも思いました。爆  笑

 

ということでこの「勘定吟味役異聞」シリーズ。自分と同じ様に、先に、前に紹介した「奥右筆秘帳」シリーズを読破した後に読んでみるのはいかがでしょうか?ウインク

 

ということで、本日はここまでビックリマークじゃあまたねパー