うひー、残暑酷しいですね。昨日も暑かった!
しかし昨日買い物に出たら、店先でハロウィンフェアのディスプレイが!
季節先取りとはいえ、さすがに早いだろ!とクーラー全開の店内で思った。
閑話休題
えー本日の本の紹介は、石原慎太郎 著 生還 を紹介したいと思います。
この本は短編集で、他に「院内」「孤島」の作品も収容されていますが、そちらの紹介は割愛します。
では、いつも通りあらすじ紹介から・・・
父親が傾けた製薬会社を継ぎ、なんとか業績を回復してこれからとの思いを抱いていた矢先、「私」は身体の不調を感じていた。
知り合いで会社から研究費を出している東京獣医畜産大学生化学教授の田沼のすすめもあり病院で検査を行った「私」は信じがたい結果に愕然していた。
結果は「黒」!手術も出来ない末期の胃ガン!抗がん剤治療をしても余命半年~一年というものだった。
結果を田沼に伝えた私に、その田沼が治癒率 0% のこの病を治す方法があると言う。
それは、獣医師である彼が開発した「コハク酸」なる酵素を病の治るまで欠かさず飲み続ける事。
正規の治療法では無いのを承知でこの方法での治療に賭けた「私」
眉唾ものの治療方法を一心不乱に継続し続けるため周囲の雑音を入れない決意を固めた「私」は、妻子、親族、仕事の関係者との接触を絶ち海辺のリゾートマンションの一室を借り一人治療を開始する。
コハク酸なる酵素を飲み続けるのみの治療に時間を持て余した「私」は、病の事、自らの事を深く沈思する毎日を送るのだが・・・
この作品は、治癒不能と宣告された末期がんに犯された「私」が、自らが持つすべてを絶って獣医師が開発した未知の治療法に生存を賭ける生と死のドラマを描いた作品です。
父親から継いだ傾いた会社を立て直し、これからもバリバリやっていこうとしていたナイスミドルの主人公に突如襲いかかる「絶望」!
医者からは無慈悲な宣告! 生への希求! そこに一筋の光が!しかしその治療は、正規の医師ではない獣医師が開発した海のものとも山のものとも言えない未知の治療!
しかし主人公はその未知の治療に賭ける!
しかし周囲の雑音に心折れ自ら治療を断念してしまう事を恐れた主人公は、妻子を含むすべての人間関係を絶ち、誰も知らない海辺のマンションの一室で一人「コハク酸」を飲み続けるだけの治療を続ける。
コレって究極の断捨離?
孤独な生活。有り余る時間。「治らないかもしれない」と思い浮かぶ恐怖!そんな状態の中、主人公はこれまでの人生を振り返り、病の事、自らの事、生と死について、深く深く沈思する。
その思考の日々の描写は、生々しい生の世界から徐々に静謐な静の世界に居場所を変えたかの様!悟りを開くための修行をする僧をも思い浮かばせる。
そして、治療をやりとげた主人公は病を駆逐し、我が家に帰還するのだったが、そこに彼の居場所は・・・ という話
ここで思ったのが、「あぁ・・この話は浦島太郎だぁ!」という印象。
突然主人公を襲う「命の危機」、そこに神とも悪魔とも知れない男の囁き「治る方法がある。」
治療には周囲の雑音を絶ち治療に専念するために、「現世」の人間関係を断捨離し、人が忙しく生きる「現世」から離れ「時間の流れが違う静謐な異世界」へ行く必要があった。
そこで「乙姫さん達との宴」ではなく「悟りを開く修行の様な孤独な生活」を送る主人公
遂に病を克服し「現世」に帰った主人公。しかし戻った主人公には共に生きるべき家族は居なかった。
死すべき運命から逃れることに成功した主人公にはペナルティーが・・・
うまくまとめられないけど、ちょっと幻想的な印象、不思議な感覚、を感じた、現代のおとぎ話といった風情の印象深い物語でした。
ということで本日はここまでじゃあまたね
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