裁判員裁判の制度が2009年に開始してから日本人もだいぶこの制度に慣れてきた。
しかしこの制度が始まる前年と制度開始年にはこの制度の仕組みの説明や問題点などがマスコミで盛んに報道されたものの、現在この事について報道されることが少なくなっており、その仕組みを正確に理解出来ている、又裁判員に選ばれることについての覚悟がある方がどれだけいるのかと思う。
かく言う自分も、裁判員制度についてテレビで観た覚えが在ったのだが、詳細はうろ覚えですし、裁判員に選出される可能性については、忘却していた。
という前フリで始めさせて頂きましたが、本日は、ミステリー分野から裁判員制度をテーマに描かれた。姉小路祐 著 京女殺人法廷 という作品を御紹介させていただきたいと思います。それではいつも通りあらすじ紹介から行くとします。
この春大学を卒業し京都の大手タクシー会社に就職した赤塚大輔は新人研修後実務に入った矢先、京都地裁で開廷される刑事事件の裁判員裁判の裁判員候補者になった旨の通知を受け憂鬱な気分になっていた。
上司からハッパをかけられ渋々裁判所に出向いた大輔だったが面接後運悪く裁判員に選ばれてしまう。
仕方なく裁判員を務めることにした大輔は、食堂のおやじや女子大生、主婦など様々な経歴の人達と共に、京都の町家で美人女優を殺害し建屋に放火したと自首してきたテレビプロデューサーの妻・立山由紀子を裁く裁判に挑むことになるが、裁判開廷後、被告の立山由紀子が一転無罪を訴えたことで、裁判は混乱状態になっていく・・・大輔ら裁判員は納得行く判決を導き出せるのか
この作品は裁判員裁判について、その仕組みと問題点を判りやすく表現している法廷ミステリー小説です。
物語は各章毎に異なる登場人物の目線で描かれていて、裁判員に選ばれた市民が自分が人を裁く立場になったことに葛藤しつつも裁判に関わっていく物語です。
事件の謎解きには裁判員から事件の真相に迫ろうと探偵紛いの行動する者が出るなど(裁判員解任)して真相が明らかになっていくが、本書は事件の謎解きより、裁判員裁判制度の仕組み、問題点を明らかにすることと裁判員に選ばれた市民各人の心理状態の変化を描くことを重視していて、謎部分はそれほど難しくない、テレビの2時間サスペンスドラマ辺りの題材に最適な作品だと感じられた。
「一生のうちに裁判員候補者になる確率が12人に一人となる」という裁判員裁判について手っ取り早くまた判りやすく知りたいならこの作品をお薦めしたいという作品です。
ということで、本日はここまでじゃあまたね
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