先日、NHK木曜時代劇の藤竜也さん主演の『かぶき者 慶次』の放送が終了した。近年テレビ放送においては、時代劇の放送がめっきり少なくなり、今や地上波ではNHKさんの大河ドラマ木曜時代劇位しか観ることが出来ない状態なのは、時代小説・時代劇好きの自分には大変残念な事である。

 そもそもテレビの地上波で時代劇のドラマが減ってきているというのは、本屋の小説のジャンル分けでは少なくない設置面積を確保している現状と、少子高齢化時代で成熟した大人には時代劇は有力コンテンツではないのかと考えている自分としては不可解だ。
 この事がどういう理由か自ら考察してみると、一つは時代劇はその時代の政治・経済・風俗が現代と大きく違い、ある程度の知識を必要としていることもう一つは今現在の俳優さんに時代劇を演じきれる程の所作や殺陣が出来ないことそしてロケで撮影できる場所・環境が少なくなり、セット構築の諸経費も現代劇より高くつくなどが考えられる。

 そんな制作しにくい時代劇ドラマだが、先日テレビで『自ら時代劇を撮って動画をネットに公開しているYoutuberを京都太秦撮影所が支援して時代劇の復興を目指している』というニュースを観たが、世界では日本人の潜在的イメージに侍・忍者・芸者・花魁があるといわれるし、これをうまくコンテンツとして料理して世界に発信できれば面白い事になるのではないかと思うのだが皆さんはどう考えるのだろうか・・・・

 などと今現在の時代劇ドラマの現状を憂いでいるのだが、テレビの話はここまでとして、本日はこれぞエンターテイメントな時代小説だという作品の一つを紹介させていただこうと思う。
 その作品とは、昭和一桁から50年代まで時代小説の一人者であった娯楽時代小説の的存在山手樹一郎先生の女人の砦をご紹介致します。それではいつも通りあらすじ紹介から・・・

 中秋の名月が綺麗な夜、先だって盗賊葵小僧を捕らえる事が出来なかった上司と共に引責辞任をした元奉行所同心・服部三五郎こと今は口入れ屋・橋田屋の帳付けの五郎三がその元上司の御隠居に呼ばれ隠居所に向かっていた時、和泉橋にて、毒殺されたとおぼしき腰元風の娘と怪しい男と遭遇した。
 しかし怪しい男と五郎三が相対している内に腰元の遺体は消えていた。
 その後元上司御隠居にその事を話してみると、その腰元毒殺事件と昨今起きている女人失踪事件を探ってみることを頼まれた五郎三
 橋田屋の女主人・お美也に嫌な顔をされながらも休みを貰い探索をしてみると、事件の影に見え隠れする、妖艶な女怪しい浪人者幕府側用人ら
しかし事件の確信に迫ろうとすると、ちょっかいを掛けて邪魔してくる性悪奉行所与力に、ちょいと気になる橋田屋の女主人にして未亡人のお美也への危難
 曲がったことが嫌いな熱血漢・五郎三は無事に事件の謎を解けるのか
・・・

 今日は、一貫して世に明朗で爽快な娯楽時代小説を提供し続けた山手樹一郎先生のファンである自分にとって数多いお薦め作品の中の一作であるこの女人の砦をご紹介するのだが、ホントこの先生の描く王道の娯楽時代小説は面白い
 熱血感で度胸もあり情も深い爽快な雰囲気の王道主人公にそんな彼の魅力に徐々に恋する
うら若き勝ち気なツンデレタイプの後家で商家の女主人のヒロイン そして悪グループには主人公を翻弄する妖艶な謎の女嫌味な奉行所与力謎の浪人悪徳幕府側用人などのど定番のキャラクターが入れ替わり立ち代り物語を盛り上げる
 ヒロインからは健康的な色気、主人公からは爽快感、快活感を、悪党からは憎々しさずる賢さを、きちんと真っ当に表現されているまさしく王道
 読んで損なしのこの作品、どこかで見かけましたら是非手に取って頂きたい! 
 では今日はここまでじゃあまたね

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