先日、ラノベの『ゲート(1)接触編』を御紹介させていただきましたが、半村良・著作の『戦国自衛隊』by1971 の発表以降この作品を範を取った、『現代の軍隊が何らかの原因で過去や異世界に飛ばされてそこで戦いに巻き込まれる。』といった作品が多数散見されるようになった。そこで本日はこのような設定の作品、ラノベの、浜松春日 著  ルーントルーパーズ自衛隊漂流戦記 を御紹介させていただきたいと思います。
 それではいつも通りあらすじから・・・

 国内が内戦状態のアフリカ某国への武力行使を伴った国連PKF活動に参加するために、陸上自衛隊の諸隊を積んだ輸送艦、補給艦を伴ったイージス艦・「いぶき」を旗艦とした艦隊が日本を出発したが、突如何やら異常な力により異世界へ飛ばされてしまう。
 自衛隊のPKF派遣艦隊が飛ばされた異世界は剣と魔法が存在する中世時代風の世界だった。
 一行は状況を確認するため近在の陸地に存在するマリースア南海連合王国の王都・セイロードに使者を送り込む。
 突如現れた異様な巨大な船に混乱するマリースアの人々だったが、女王ハミエーアの「国にとって益になる」と判断で自衛隊を親しく歓待する。(表向きだが・・・)
 そんな最中突如として海の向こうの覇権国家・大帝国フィルベルグの軍勢がセイロードに攻めてくる。
 自衛隊は当初介入を控えていたが、民間人にも多数の犠牲者を伴う暴虐非道なフィルベルグ軍の非道な行為に遂に派遣部隊は武力介入を決断する。
 異世界の国家間戦争に巻き込まれた自衛隊派遣部隊の運命や如何に・・・
 
 えー、今回の作品も『ゲート』と似たような設定の作品です。序章で述べたように、「現代の軍備を備えた近代軍が突如過去へ、異世界へ・・そこで現地の勢力と戦争状態になって・・・」というのは、もう使い尽くされたネタですが、逆に言えば著者の力量が如実にあからさまになる設定だと言えます。
 このような設定だと、序盤は過去や異世界の勢力は見たこともないオーバーテクノロジーによって構成された異世界又は現代の軍隊に驚愕し為す術もなく惨敗するものだが、後に戦術や戦略、政略などによって対抗してくる。対する近代軍である主人公側の飛ばされたモノ達は、自分達の規範(人道主義、国際法、など)や補給・修理能力の欠如未知なる生物・人種の能力特性などによって、実力を発揮できない&苦戦する。この作品は『ゲート』によって設定された画期的なアイデア『コチラ側と異世界を繋ぐ門の存在による補給(兵站)が途切れない』程ではないが、補給船、輸送艦を引き連れて大量な燃料や弾薬を持参している設定は、主人公側の話の展開をだいぶ楽にしています。(中長期的には不利な展開   
 このような設定の話は、序盤話の展開が楽に創作できますが、やはり中盤以降の展開をどう面白くしていくか、そして作品の〆をどうするのか戦争ものは物語をどう終わらせるのかが作者の力量を示すと思うので、続きに注目したいと思います。
 
 この著者は、この手の題材で描いた他の作者と同じくまずまずの出だしだと思います。しかし今後作品世界をよりディープに突き詰めていくとたちまち書かなければいけないこと(政治・経済・世界情勢・風俗・習慣・思想・宗教・人間関係、など)が増え、作品世界が拡がり、時に作者の力量を越えてしまい収拾が付かなくなり筆が停滞する事もあります。本作品の著者が今後話をどう展開していき、どこらへんで話を収拾し、どうオチをつけるか、大変興味があります。

 RPG世界の様なファンタジー世界に近代軍の主人公側の勢力が飛ばされて・・・ドラゴンやゴーレム、騎士団、魔法使いと戦うラノベらしいハチャメチャな設定の物語滑稽武藤なこんな作品、息抜きにでも読んでみてはいかがでしょうか

 それでは、本日はここまでじゃあまた

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