現在、日本列島を台風8号縦断しようとしている。 この台風が来る前にも各地に雨がまとまって降って地盤が緩んでいる箇所も多いと予想されるのでかなり警戒しなくてはならないだろう。 こんな時に何だが、今日ご紹介する作品はパニック・ディザスター小説を多く書いておられる高嶋哲夫さんの東京大洪水でいきたいと思います。 不謹慎だうんぬんかんぬん と言われるかもしれないが、こんな時だからこそ、風雨を避け外出は控えて本書のような作品を読むことでより内容を実感出来るのではないかと思う次第です。 ではいつも通りあらすじ紹介から行くとします。

 日本列島の南に23号、24号と相次いで台風が発生し本土に近づいてくる中、気象庁は東京方面への接近上陸は無いと判断し報道していたが、日本防災研究センターの気象学者・玉城孝彦はその事に一抹の不安を覚えていた。玉城はスーパーコンピュータを使ったシュミレーションを行い、23、24号の二つの台風が合体し未曾有の巨大台風に成るとの結果を得て、このままでは以前から研究していた荒川の破堤からの氾濫が現実に成る可能性に戦慄する。 玉城が警鐘を促す中、東京に巨大台風が直撃してしまい遂に荒川が氾濫する・・・そんな中、荒川の側に建設中の高級マンションには、玉城の妻で一級建築士の恵子が駆けつけていた。 それぞれの場所で夫婦それぞれが台風に立ち向かうのだが・・・

 近年、東京では首都圏外郭放水路、等の防災対策施設も充実してきていて、かなり対策が施されているが、荒川周辺を含め0メートル地帯、他、の危険性が完全に無くなったわけではない。台風を含む気象現象も強力になってきている。 やはり究極の防災は、市民の危機意識啓蒙活動そして充分な備えであり、正確な情報収集と速めの退避行動が犠牲者を減らす最大の手段である。 改めてこの事を認識するのには、こんな時にこそ、この作品を読むべきと感じた。 
 
 まあ、ディザスタームービーや小説好きな自分としては、
→迫り来る危難を見過ごして油断しまくりな市民
危機を察知して警鐘を促す主人公
→だが、前例踏襲、楽観的予測の末、警告は無視
危難来襲
右往左往逃げ惑う人々 
危難に立ち向かうヒーロー&ヒロイン そこに賛同し協力する人々
危難が終わって・・・
 のプロセスや人間ドラマを存分に楽しみたいと思ってしまうんです。 兎にも角にもこんな時だからこそ、読み終わって身近な防災の事についてアレやコレや考えてみるのも良いのではないでしょうか。

この作品では、結構あっさり気味の表現で、キャラクターもお約束の危機感欠如のダメダメキャラも居るが若干大人しめ、もっと卑怯でぶっ飛んで、主人公以下を手こずらせてくれるキャラクターが居るとより物語が楽しくなるのだが、そこまで強いキャラクターはいなくて、台風さんもあっさりと猛威を奮います。まあ、現実っぽくて良いのですが、主人公も大人しめの表現で、ヘタすると奥さんの方がより、葛藤、苦悩、決断を表現してくれてます。それでも充分パニック小説してますのでそれなりに楽しめると思います。 本書を見かけたら手に取って見たらどうでしょうか・・・

 さて、自分も植木鉢やプランターを屋内に入れ、屋外の飛びそうな物を固定して、電池、懐中電灯、ろうそく、ラジオ、水、非常食を用意して台風に備えるとしよう

東京大洪水 (集英社文庫)/高嶋 哲夫
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