今日、自分の所では雨が降っている。 冬の雨は薄暗く冷たいので外出していると自分のテンションも落ちてくる・・・こんな日はお家で読書はいかがだろうか「・・って、あんたはいつでも読んでいるじゃぁないか?」なんて言わないでくださいね。 今日、ご紹介させていただく作品は、時代小説 宇江佐真理 著  紫紺のつばめ 髪結伊三次捕物余話 です。以前第一巻の「幻の声」をご紹介させていただきましたが随分前ですのでお忘れになったかもしれません。が、その続編です。 ではこの作品のあらすじへと行きたいと思います。
 
 廻り髪結の伊三次は相変わらずお得意廻りを続ける傍ら町奉行所定町廻り同心・不破友之進の小者として働いている。忙しく働く毎日だがたいした稼ぎにもならず惚れあった深川芸者の文吉ことお文に、「店を持つから嫁になってくれ」と言える状況には当分なれない。 そんな二人の将来に不安を覚えるお文に、羽振りがいい材木問屋・伊勢屋忠兵衛ちょっかいを出してくる。申し出を受けつい貢いでもらったお文 そのことを知った伊三次はお文に別れの言葉を投げるのであった・・・

 前回ご紹介させて頂いた小杉健治さんの「父子十手捕物日記」シリーズの明るく前向きかげん全開な雰囲気とはテイストが違い、宇江佐さんのお話は、同じお江戸の日常生活における人情話という共通性はあるものの、物悲しさ切なさ苦さ忸怩たる思いじんわり噛みしめる幸せの表現の絶妙さが売りになっていると思う。 この巻では苦さ甘さを知っている伊三次とお文の大人の男女の恋愛模様と伊三次本人の周りで起きる切ない話などで構成されている。 表題作の「紫紺のつばめ」ではお文の、伊三次との将来への不安から起こした行動に、伊三次は怒り別れを口にしてしまう。著者が今後の二人の行末に読者を釘付けにした後、「ひで」にて好きな女の為に身に合わない生き方を強いられた幼なじみの死に直面し慟哭する伊三次を見せ、「菜の花の戦ぐ岸辺」では伊三次自身に殺人の嫌疑をかけられてしまう。 自分を長く見てきてもらった不破に信じてもらえなかったと怒りと悲しみにくれる伊三次そんな伊三次を救いに走るお文 自分の本当の気持ちを再確認したお文の行動に目が話せません。 著者は「鳥瞰図」にて伊三次の心の隅に残る不破へ想いを描き出しグッとこさせる。 とにかく著者はこちらの心を打ち寄せる波のように揺さぶりたおすのだ。 まあ捕物話と云いながら捕物には重点が置かれずに伊三次の身の周りにおける情話を描く事に重点が置かれているがそんなことはご愛嬌 そんな心揺さぶられるのこの作品、前巻「幻の声」も一緒に手に取ってみてはいかがだろうか。

 
紫紺のつばめ―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)/宇江佐 真理
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幻の声―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)/宇江佐 真理
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