皆さんは八甲田雪中行軍遭難事件を知っておられるだろうか この事件は日露戦争の始まる二年前の明治三十五年一月、青森県八甲田山中を雪中行軍(歩いて移動する)中の日本陸軍第八師団歩兵第五連隊211名が遭難し、内199名(95%)が死亡したという世界の山岳遭難事故史上空前の事故なのですが、今日ご紹介する作品はその事故後を題材としたフィクション小説です。 そのあらすじは・・・

 明治三十八年、満州奉天、第八師団司令部、津上賢吉は、前年起きた日露間の戦争は激化に伴って、青森からさほど緯度が変わらぬこの地にやって来ていた。津上「司令部付き」という小間使いや伝令役でしかない部署に配置されているのをいい事に秘密裏にある事を調べている。それは三年前に起きた八甲田雪中行軍遭難事件で亡くなった自分の弟の死の真相と消えた小銃二丁についてであった。 緘口令が出ている中、師団上層部から出ている命令による調査だと図り、事件関係者に面会し事件を調べていく津上
  事故後生き残った将校の謎の死とその真相を知り得る関係者の死 死者に責任を押し付け大甘な裁定を下し責任を逃れた上層部 軍部の世論操作 調査への妨害行為 旅順攻略⇒奉天会戦へと戦争は激化し膨大な日本兵の血が大地を赤く染めていく中、この調査を行う意義はあったのか、激烈な戦場に放り込まれた津上の運命は・・・
 
 本作は、八甲田山雪中行軍事件の当事者であり被害者でもある青森第八師団が日露戦争において、ほぼ同緯度の満州奉天黒溝台にて
激烈な冬季戦の末、多くの犠牲者を出した事実を元に、著者独自の史観によって描かれた歴史ミステリー小説です。 謎を抱え、八甲田より命を長らえて帰還した二人の大尉が黒溝台の会戦にて戦死した事実を基に描かれたこの小説はかなり重厚腹にズシーンとくる一作です。 国民は皆平等と言いながら、兵(民)を消耗品としてしか見ない支配者層、という事が明治維新後にも連綿と続くという考察をする著者が斬りこむこの一作、この作品をお見かけしたら是非ご購読を 歴史・戦争を知らない世代には、遭難事故の全貌や、機関銃の待ち構える敵前への白兵突撃の悲惨さ、はイメージできにくいかもしれないので、下記映画作品をレンタルして観ていただければイメージしやすいので合わせてどうぞ
高倉健主演、八甲田山 完全版

仲代達矢・あおい輝彦主演、二百三高地
白兵/北上 秋彦
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