ここのところ、景気の悪いニュースばかりしか聞いていないような気がする。特に大手電機メーカーの業績見通し悪化ニュースには呆れてしまう 地デジ化及びそれを後押しするエコポイント制度により日本全体で地上デジタルテレビへの変更を果たした後、何が起きるのか予想がついた方は多かったはずであるのに大手電機メーカーの役員・経営陣の方々がその予想・対処さえしていなかった事に驚愕した!地デジへの転換のニュースが報道された時、家族で話した雑談でも話されていたくらいなのに・・・そして業績悪化の起きた後のお決まりのリストラ、いくらなんでも能無し過ぎではありませんか経営陣さん!このニュースを聞いたときに今日紹介する作品の事を思い出した。

 今日ご紹介する作品は、澤田ふじ子 著  火宅の坂 という人情時代小説です。この著者は、江戸を舞台とした作品を書く方々が多いなか、主に京都などの上方舞台とした作品を書かれているのです。その上方・京ことばでの会話のやり取りはとても
優しく聴こえて人情話をより効果的にしているのです。さて、この作品のあらすじなんですが、

 美濃大垣藩京屋敷に仕える天江吉兵衛は腕は立つ、勤務もまじめで謹厳実直だが勤務明けに 町屋の絵師に絵を習いに外出して度々門限破りをしていた。その事が露見して罰を受けた後 しばらくして、藩士が
驚愕する事が起きる。藩財政の悪化により藩士の多くに永御暇(つまりリストラ)が出される事になったのだ。藩の重役は自らには何も処さず無慈悲に藩士を辞させてゆく、そんな中には重役に睨まれていた吉兵衛の姿があった。しかし吉兵衛は町絵師として市井の中で暮らしてゆく事を決意する・・・市井の人達や家族、同じ境遇の元藩士達と助けあい新たな道を進む吉兵衛達の前途には多くの至難が待ち受けていた。

 この作品では、藩に捨てられた浪人達が京の市井の人々の助けを借りながらも
胸を張っていきてゆこうとする姿が清々しい人情時代小説です。主人公の吉兵衛はむろんの事、その母親の友江さんのその立ち振舞には、ぐっと心を掴まれてしまいました。そして京の市井の人達の優しさ・・・くぅ~!

 また この作品を通して著者は自分の無策を棚に上げ自分の地位の安泰のみを図る藩の上役・重臣を描き、上に立つ者としての品格覚悟を現代社会の指導者・経営者に問うているのではないか
 と感じました。 大震災もあり経済も悪い、今、こんな時だからこそ この作品を読んでみてはいかがだろうか。

火宅の坂 (光文社時代小説文庫)/澤田 ふじ子
¥760
Amazon.co.jp