武士道というと、いわゆる徳川・江戸期の武士のふるまい方を基本にしていると思われる。戦国期・室町時代の武士のものの考え方は、徳川・江戸期の武士とは異質なものが多く、以前紹介した「奔る合戦屋」「小太郎の左腕」などの作品における戦国期の武士の考え方と「居眠り磐音 江戸草紙」「御鳥見女房」における江戸期・幕藩体制の武士は、忠義などの考え方一つとっても大きく違う!
 今回、紹介する作品は 葉室麟 著  蜩ノ記 です。 江戸期幕藩体制における武士の考え方で、自己犠牲、忠義 などの色が濃い武士道の話である。 この作品を読んで、ここまでその思想が強い主人公を描く事はヤリ過ぎ感
 やカッコつけ過ぎ が強すぎとの印象も受けた。まあ、物語なのだからこれぐらいいかなきゃいけないかな!とも思うが・・・

 本作のあらすじは、豊後・羽根藩の奥祐筆・壇野庄三郎は城内で刃傷沙汰に及んだがからくも切腹を免れた。しかしその代わり実力者の家老よりある命を受ける。それは、七年前、当時の藩主の側室と不義密通をしたとして、家譜編纂の仕事と十年後の切腹を命じられ向山村に幽閉されている元郡奉行・戸田秋谷の元に行き、家譜編纂の手伝いをしながら当人の監視をせよ!だった。秋谷の元で彼の精錬さに触れた庄三郎は彼の無実を信じるようになっていったが・・・命を限られた男の気高く壮絶な覚悟を描いた時代小説である。

 この作品は気高く生きる男・秋谷とその家族を描くことで、「武士道とは」「真の御奉公とは」「親は子に対して何を伝え、残すのか」と言う事を描いていると思われる。対局にある実力者で
腹黒い家老のキャラクターも良い対比となっている。皆さんも秋の夜長、こんな作品も読んでみてはどうか

蜩ノ記/葉室 麟
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