今日、紹介する作品は仮想戦記物である。「えーっあの血なまぐさいのぉー私ああゆうドンパチして人が大勢死ぬ戦争ものなんてキライっー」なんて言われて引かれる方も多いのでしょうが、自分はこういう IF 戦記物が大好きなんです。戦争というのは、やはり「命」という唯一無二の大切なものを「欲望」の為に祭壇に捧げる、人類最大の呪われた祭りなのですから、人が生と死の狭間で足掻きもがく様を、自分に害が及ばないなら観てみたいと思う欲望を持っている人は結構多いのだと思うのです。まあこういう空想世界の中でなら、殺人も、恋愛も、なんでも観れるのがいいですよね だから読書はやめられない!

 さて、本題に戻して、今日紹介する 佐藤大輔 著  レッドサンブラッククロス(1)合衆国侵攻作戦 は、もう1つの世界で国家社会主義国ドイツと帝国日本の2つの勢力が世界を二分して覇権を争っている1990年に始まり、こうした状況が起こった1947年・第三次世界大戦開戦前に遡った後、この後起きる世界の趨勢を決めた大戦争の顛末を、時には政治家、官僚、高級軍人の舞台で、時には一戦場に於いて命を削りあう士官、一兵士の目線から戦争を描き出す群像劇となっています。
 
著者の佐藤氏は大変筆が遅い方でしばしば作品が完結しない人なんですが、それだけに、人物像の描写などを丁寧に描き出し、台詞回しも大変印象深いので、どっぷり浸かって、次巻を何年も待ち続けて屍
になる読者がザラにいる作家さんです(笑)例えると漫画の世界でいうとFSSの永野護さんなんかがいます。
 人物の描き出し方で特徴あるのは、時には傍観者で、達観、シニカルな雰囲気を漂わせ、時には自分を舞台俳優の如き振る舞いで戦争の狂気の中を必死に正気を保とうと努力するキャラクターを描き、戦争の無慈悲さ狂気を浮き出させているのが特徴の作家さんだと思います。ハマるかハマらないかがはっきりしている作品だと思いますので、おすすめしづらい作品です。