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先週は暑かったですねぇ。全国的に猛暑日を記録した地域が続出!

 

梅雨時期だってなのに、強い雨の日はあれど、しとしと降る日は少なく・・

 

ダムや溜め池の貯水量、大丈夫なのでしょうか?

 

熱いといえば、連日多くの候補が声を枯らして自身の主張を訴えた東京都知事選の最終日です。

 

果たして誰が都知事になるのか?

 

結果に注目です。

 

閑話休題

 

はい、それでは本の紹介へと参りましょう。

 

本日紹介する作品は、千野隆司さんの『札差市三郎の女房』です。

いつも通りあらすじ紹介から参りますのでよろしくお願いします。

 

 

【あらすじ】

時は江戸、将軍家斉の時代、幕府の慢性的な財政危機、武士の借金漬け生活、賄賂や汚職が日常化していた前任の老中首座田沼意次が失脚した後、幕府の権力を握った老中首座の松平定信は八代将軍吉宗を見習って幕藩体制の立て直しに乗り出した。

 

綱紀粛正の元、武士の札差からの借金漬け解消を狙い「棄捐令」を発し武士が札差から借りた借金の棒引きを命じた事で、我が世の春を謳歌していた札差は大打撃を受け辛うじて生き残った札差は気息奄々の状態となった。

 

そんな時代の中、金融業者としての矜持を持って生きようとする札差上総屋市三郎は、ある雪の日に、侍に襲われかけた綾乃という女を助ける。

 

綾野は、札差への借金で身動きがとれなくなった下級武士の娘で、実家への援助との見返りになかば人身御供のような形で、有力な旗本坂東志摩守の妻となったが、夫のあまりに非道な扱いに耐えかね、屋敷を逃げ出してきたのだった。

 

武士を顧客とする札差にとって、危険きわまりない綾乃の存在。しかし、市三郎は綾乃をかくまう。上総屋の主人である市三郎、番頭の勘兵衛、手代の錠吉や喜助、乙助に囲まれ、次第に心の傷を癒していく綾乃だが、生家を借金漬けにして没落させた札差への不信感は拭えなかった。

 

しばらく続いた平穏な日々、しかし綾乃の存在を嗅ぎつけた坂東志摩守の魔の手は上総屋へと忍び寄っていく、しかし、綾乃の存在を嗅ぎつけた坂東志摩守の魔の手は上総屋へと忍び寄っていた。

 

次々とおこる不可解な商売上のトラブル。札差としての信用を失墜させようとする何者かの罠。必死に苦難を乗り切る市三郎や上総屋の面々だが、さらに大きな陰謀が進行して・・

 

【解説】

 

①本作の著者は千野隆司さん。

 

本作の著者は千野隆司(ちのたかし)さん。1951年東京都生まれの73歳

國學院大學文学部文学科卒業後、出版社勤務を経て作家としてメジャーデビュー。

1990年「夜の道行」で、小説推理新人賞受賞。

2018年、「俺は一万石」シリーズ&「長谷川平蔵人足寄場」シリーズで、歴史時代作家クラブ賞(シリーズ賞)受賞。

時代小説を多数執筆する作家さんです。

 

代表作

・夜の道行

・俺は一万石

・南町同心早瀬惣十郎捕物控

・本所竪川河岸瓦版

・蕎麦売り平次郎人情帖

・湯屋のお助け人

 

②札差とは何?

 

札差とは、徳川幕藩体制下で年貢として集められた米から幕府が旗本に与える「録」である米を預かり「貨幣」に変換し旗本へ返す商売の事。

武士から金と引き換えに米を所有した札差は米問屋に米を卸し、米問屋は買い取った米を市中の小売りの米屋に卸し庶民に米を供給していました。

 

本来はそれだけだけだったはずが、インフレの影響で物価が上がる中、武士の録は上がらずで、武家の暮らしは困窮。そこで札差は預けられた米を担保に武士に金を貸す様になりました。そして札差は豊かになり、中には大富豪になる者も出る様になりました。

 

③棄捐令とは何?

 

棄捐令とは、天明七年に徳川家斉の世に幕府老中首座に就任した松平定信が推し進めた寛政の改革の一政策。

武家の借金に寄る困窮を解消する為に「天明四年以前の武士による借財の返済は免除とされ、それ以後の借財も年利を下げたうえで長期の返済を許す」という武士だけが得をする法を発布した。

これにより我が世の春を謳歌していた札差の多くは廃業を余儀なくされ、景気も低迷していく。しかも札差の多くが廃業し、残った札差も割に合わない武家への金貸しを渋る事になり。結局多くの旗本御家人達は困窮していった。

 

【感想】

 

本作は、「米を録とし支給される武士の経済の欠陥による武士の困窮」という背景を元に描かれたお話となります。

 

武士は米を録として主君に仕えていますが出世しない限り録は上がらず録は固定。しかし世の中の実体経済は緩やかにインフレ方向に推移します。収入は変わらずに物の値段が上がり続けていけば、当然武士の生活は徐々に貧しくなっていきます。

 

本来収入が十分でなくなれば、節約をする。生活のグレードを下げるという対応を取らなくてはいけないのですが、それにも限界が・・そこで武士達は「借金」をして急場を凌ごうと考え、換金消費財である「米」を担保に札差から借金を行う様になります。

 

札差は「米」を担保に金を貸すので取りっぱぐれもなし。武家は「金」を忌まわしいものと称し「金勘定」には熱心でない為、金利計算ができず借金が膨れるばかり、数年先の米まで担保に捕られにっちもさっちもいかなくなり困窮していきます。

 

この時代背景と武士の経済の欠陥がお話のベース(背景)です。

 

本作のヒロインで貧乏御家人の娘綾乃の実家も札差に借金漬けになり困窮します。そこで泣く泣く綾野は、実家への援助との見返りになかば人身御供のような形で、有力な旗本坂東志摩守の妻となります。しかし坂東志摩守は暴君で綾野をいたぶる事が趣味の様な男。綾野は実家の事を想い坂東志摩守の暴力に耐える日々です。

 

しかしある日、実家が不祥事で潰れ家族も死んだ事を知り感情が爆発!綾野は屋敷を飛び出し追手に追われますが、そんなピンチを救ったのが、綾野にとって憎むべき「札差」の上総屋市三郎だった。

 

市三郎に保護された綾野だったが「札差」を憎む綾野は、市三郎や上総屋の面々とは慣れ親しめない。しかし時が経過すると市三郎は「札差」の本分を守って生きていこうとする誠実な男だと判り彼に好意を寄せる様になっていく・・

 

しかし綾野に逃げられた坂東志摩守が、札差の上総屋に綾野が匿われている事を知り上総屋潰しと綾野の奪還の為に暗躍していく。

 

あの手この手の悪巧みで上総屋を揺さぶり攻撃していく坂東志摩守!

苦戦する上総屋!

 

ヒロインを護るヒーロー達VS悪の上級武士の対決。

 

ヒロインを護ろうと奮闘するヒーローに誠実さを認め思慕の念を持つヒロイン

 

うぉー盛り上がるぅー!

 

時代背景と武士の経済の仕組みを理解しないとおもしろく読めないかもしれませんが理解して読めば、すごくおもしろい。

 

良く出来た勧善懲悪話なので嫌な気持ちで読み終える事もなし、お薦めです。

 

何処かでこの作品を見かけましたら是非手に取ることをおすすめします。

 

という事で本日はここまで!じゃあまたね。