イスラエルのパレスチナのガザでの戦闘で3万人以上ともいわれる死者がでており、イスラエルを支持する国はほとんどなくイスラエルは世界中から批判を集めている。それを支持するアメリカはその中核にあり、国内でも若者を中心に「虐殺への加担」への批判は頂点に達している。なかでも、コロンビア大学、イエール大学、ブラウン大学、UCLA、フロリダ大学など名門大学でパレスチナ支持の学生による占拠と、これに対する警官の突入が相次ぎ、大学が“戦場”と化している。ベトナム戦争反対を掲げた反戦デモが全米に吹き荒れた1960年代末のこと以来だ。また、米政府のイスラエル寄りの外交姿勢への不満から辞職する連邦政府職員が相次ぐ。

 

そのような中、国連総会でパレスチナの国連への正式加盟を支持する決議案をの賛成多数で5月10日採択した。賛成国は日本やフランス、中露など143国、 反対は米国やイスラエルなど9か国、棄権は英国やドイツなど25か国であった。ただ、拒否権を持つ米国が反対、イギリスが危険をしており実現の可能性はないが、国連加盟国の7割超が支持する中、米国とイスラエルの孤立が際立つ形となった。

 

これは、先月、パレスチナの正式加盟を勧告する安保理決議案が米国の拒否権によって否決され、アラブ諸国が総会決議案を提出し、70か国超が共同提案となった。アラブ諸国は総会で多くの国から加盟への賛成を得たことで、米国とイスラエルへの圧力を強めることとなった。

 

バイデン政権はイスラエルのネタニアフ首相に対して、停戦や終戦を呼びかけているが不発に終わっている。ガザでの民間人被害の拡大に懸念を示すバイデン政権は、ガザ最南部ラファへの大規模な侵攻に反対し、イスラエルへの弾薬輸送を保留している。これも決定的なものではない。

 

アメリカはイスラエルを軍事的、経済的、政治的支援を行っている。軍事支援はイスラエルに対して武器や装備品の供与、軍事訓練の提供など毎年数十億ドルの軍事支援を提供している。経済支援は、インフラ整備や教育・医療などの分野への投資など毎年数十億ドルの経済支援を提供しています。政治支援は、国際社会におけるイスラエルの地位を維持するためイスラエルを支持する国際世論を形成している。

 

なぜ、アメリカはこれほどまでにイスラエルを支援するのか、理由は大きく3点ある。第一に米国内でのユダヤ勢力は経済界や企業など様々な分野で大きな影響力を持っているからである。この支持はバイデン大統領であれ、トランプ前大統領であれ重要であり、もし支持を失った場合には大統領としての道は危うくなる。

 

第二は、宗教的教的な理由である。米国はもともとプロテスタント(キリスト教福音派)が作った国であり、その影響力は絶大である。そこでは、イスラエルを「神の選民」と見なし、イスラエルを支援することが神の意志にかなうと考える。そのネオ・コなどのの福音派コミュニティの支持を獲得するために大統領ははイスラエルを支援する。

 

第三は、米国の中東政策にとりイスラエルは地政学的要地である。アメリカが中東での覇権体制を維持するためにイスラエルの安全保障を重視してきた。イスラエルは中東地域におけるアメリカの主要な同盟国であり、地域の安定やテロとの戦いにおいて重要な役割を果たしている。

 

バイデン政権のイスラエル支援は、中東でアメリカが孤立することになるため、イスラエルとパレスチナの和平プロセス促進の努力をしているが、なかなか結実しない。5月8日も、パレスチナ自治区ガザの戦闘休止を巡る交渉に関連してバーンズCIA長官はネタニアフ首相とエルサレムで会談し、ハマスが受諾したとした休戦案について提案したが拒否された。

 

これはまた、11月の大統領選挙に直結する中核的問題である。