日米首脳会談で、バイデン大統領から米国が中心で同盟国とそれぞれつながる「ハブ・アンド・スポーク」の2国間型の同盟だけでは秩序維持ができない。したがって、米国が同盟を結んでいる同盟同志の関係をネットワーク化した「グリッド型同盟」へとトランスフォーム(進化)させることが狙われた(エマニュエル駐日大使)。

 

日本は米国の「オネストブローカー」(忠実なしもべ)として日米のウイングを他国にも広げる。米日韓、米日比、米日英、がそうである。バイデン(米)、岸田(日本)、マルコス(比)のデファックト(事実上)な3か国同盟へと展開する。ここに、AUKUや、日米韓同盟などのグリッド型の同盟が成り立つ。

 

その目的は極東正面における米国の脅威―中国、北朝鮮、ロシアーへのヘッジ(抑止)である。米軍は台湾有事に際して、日本とフリピンを前進基地として使用する。つまり、ウクライナがロシアと戦うに際して、陸地からはポーランドから、そして海からは黒海を通じてポーランドから武器や食料を供給している。台湾有事のアナロジーは、ポーランドの役目を日本とフィリピンとなり、黒海は日本海および南シナ海となる。

 

マルコス政権は南シナ海で中国との緊張が高まる中、米国や日本と軍事的関係を深めてきた。米軍が使用できるフィリピンの基地をほぼ倍に増やしたほか、日本とは自衛隊とフィリピン軍の相互往来を可能にする円滑化協定(RAA)の交渉を進めている。日本がその重要な一角を担う。ウクライナ侵攻でロシアに厳しく対応し、防衛政策を強化してきた岸田政権をバイデン政権は米国は同盟国の忠実な模範(しもべ)とみている。共同声明に日米豪、日米英、日米韓の協力強化がうたわれ、日米首脳会談に合わせて日米比首脳会談が開かれることも象徴的だ。

 

これを「同盟のジレンマ」としてみた場合、「表」は日本は米国と忠実な「しもべ」となることで抑止力は強化される。尖閣危機が起きた場合、米国は日本とともに戦うことを今回の会談で「尖閣諸島に日米同盟第5条は適応される」とされたことだ。しかし、このことは過去、繰り返し繰り返し米国の大統領が日本に話してきたことの繰り返しにすぎない。問題は、尖閣危機が起きた場合、いつ米軍が駆けつけるのか、どう米軍は関与するのかが最大の日本の懸念である。日本としては、米軍を尖閣有事で「巻き込みたい」。

 

「同盟のジレンマ」の「裏」は、米国から見た場合、尖閣有事で「巻き込まれる」ことになる。米国の保守系のシンクタンクの有識者も「尖閣はロック(岩)」であり、「米国人の若者が誰も知らない尖閣諸島(ロック)で死ねば米国の世論がもたない」という発言もある。したがって、尖閣諸島へ中国人民解放軍がチャレンジした場合には、当然ながら自衛隊がまず戦う。その後、米軍が日米安保第5条にもとづいて駆けつけるということになる。しかしながら、「いつ」、「どのように」駆けつけるのか、が問われる。日本としては、何としても米軍は自衛隊とともに尖閣をめぐって初戦から共に戦ってくれることを願いしかない。自衛隊単独で中国人民軍と戦う玉砕になる。玉砕後に米軍が駆けつける事態はさけねばならない。