大統領の就任演説の時、「アメリカ社会の分断の危機」を叫んだのは黒人として初めて大統領となったオバマであった。アメリカ史上初めて黒人が大統領となったわけであるから、それまで米国の中核にいた白人・WASPたちは危機感を募らせた。その危機感が白人を再結成させたトランプの大統領の登場となった。そのトランプを破ったバイデンはオバマの「人種の壁を乗り越えたオールレースの結束」を踏襲した。そのため、バイデン大統領は「分断ではなく結束を目指す」と誓った。そして現在、アメリカ社会の分断はトランプの再登場で激化している。つまり、見捨てられようとしている白人の危機感がトランプを再び大統領への押し上げる勢いとなっている。一方、米議会はリベラルの民主党と保守の共和党の2大政党で成立している。かつて両党の政治理念は中道寄りで、共通する考えも多くあったが、近年は政治的理念が離れている状態にある。

 そのため、アメリカ国民も分断しているわけである。国民の民主党支持者は、LGBTQなどのマイノリティーへの差別に反対し、移民にも寛容である。一方、共和党支持者は、ラストベルトの白人の低所得労働者などが中心で、社会的マイノリティーや移民に自分たちが脅かされるとする人たちである。

 中東のイスラエルとハマスの争いでも、共和党支持者はイスラエル支持、民主党支持者はイスラエル支持でもパレスチナ市民に犠牲が出ることには反対する。コロナ禍もアメリカ社会の分断を深刻にした。民主党支持者は専門家の科学的判断に従うべきだとし、マスクの着用やワクチン接種に積極的でした。一方、共和党支持者は「個人の自由」を重んじ、マスク着用やワクチン接種に反対した。