地政学的な「潮目」が変わり始めている。

 7月の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、米国はウクライナの安全を軍事、情報共有、サイバー、その他の物質的支援で長期的に支援をと述べた。ロシアとの和解が「全占領地の返還」と「戦争犯罪の謝罪」という条件の高いハードルが維持されればロシアは妥協できずウクライナ戦争は長期化するであろう。

 プーチン大統領からすればワグネルの乱後、政権の掌握が至上課題となりウクライナ戦争での絶対に妥協できない。プーチンとワグネルのプリゴジンは一見、手打ちをしているように見えるが一寸先は闇である。プーチン大統領はさらに疑心暗鬼となり独裁化するであろう。プーチン体制が継続する限り、ロシア国民は民衆蜂起ではなく耐乏を選ぶ可能性が高い。

 とするならば、ワグネルに続く反逆が起きるかがカギを握る。反乱は保守的すぎる独裁者の「終わりの始まり」となるだけで民主化へのカウントダウンとは限らない。ポスト・プーチンでただちに民主国家になはならない。

 また、欧州からすれば、ロシアの次権力者がウクライナと停戦しても欧州は以前のようなロシア融和策に戻らないであろう。うなる。ロシアの脅威は消えず、スウエーデンもNATO加盟をする。

 このような動きの中、米中接近が目立つ。先月、ブリンケン国務長官続き、イエレン財務長官が今月に入り訪中した。いずれもロシア問題を話し合うためである。

 その結果、アメリカのバイデン大統領は中国とはデリスキング(リスク低減)、ロシアはデカップリング(分断)傾向がますます強まる。それが主要7カ国(G7)の外交指針となり、ロシア貿易はさらに制約が強まる。ロシアでの資源権益が必要な日本はどうするのか。