詐欺の詐欺たるゆえん | 気力・体力・原子力 そして 政治経済

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 (旧有閑爺いのブログ)

 三橋ブログは「MMTという詐欺理論」を広めるため、懸命に努力しています。
 今回は4月8日付「銀行預金というシステムとロシアのデフォルト」という記事を例にとり、MMTという詐欺理論の詐欺たるゆえんを解説してみたいと思います。

 取り上げたエントリーの冒頭に次のようにMMTの主張の根幹をなす文言が記されていました。

 【さすがにネットでは「勘違い」している人が減ってきたと思いますが、銀行預金は銀行にとって「負債」です。
  そして、銀行は「貸出」をすることで、銀行預金を創出します。銀行預金は「預金者の資産で、銀行の負債」。この「貸借関係」が成立した瞬間、貨幣はこの世に生まれます。
 そして、我々は「自分の資産、銀行の負債」である貨幣を、振り込みという形で決済に用いることができます。】


 この文言には真実と嘘が織り交ぜて存在しており、世の人は嘘と真実を切り分けることが出来ず、すべて真実であると信じ、そのことで日本が抱える経済上の問題を解決する能力を失っていると言える状態になっているのです。

 そうです。詐欺理論を信じることの罪深さは「経済問題の解決能力」を失うことにあるのです。
 ですので、MMTが述べていることのどれが真実でどれが嘘なのかを切り分けて認識することが、経済問題を解決するための第一歩となることなのです。

では、逐一に文言の真偽を述べていきます。

①「銀行預金は銀行にとって「負債」です。」・・・これは正しい記述です。

②「銀行は「貸出」をすることで、銀行預金を創出します。」・・・このことが出来るのは日本では日本銀行のみです。一般の市中銀行ではできません。
 一般の市中銀行は貸し出し可能な現預金がある場合のみ、貸付金を銀行預金の形で引き渡すことはあります。
 しかし、金を借りる者は預金をするために金を借りるのではありません。預金で受け取っても引き出して使います。預金引きだし請求があれば銀行は応じなければなりません。
 従って、上記の文言は「市中銀行は貸出を行うことで、手持ちの現預金を貸出債権という資産に換える」としなければなりません。もちろん貸金引き渡しのチャンネルとして預金口座を利用すれば、貸出債権(銀行にとって資産です)と同額の預り金(銀行にとって負債です)が積まれる状態は一時的に存在しますが。
 実は貸し出しをすれば銀行には貸出債権という資産が生まれるのです。MMTという詐欺理論はこうした事実を隠して、貸し出しにより預金という資産が生まれるとしか説明していません。
 さらにMMTの悪質なところは、一部の通貨発行可能な銀行と一般の市中銀行とを切り分けずに、意識して混用することと、貸付金引き渡しの際に一時的に出来るかもしれない状態を必ずそうなるかごとき表現をすることにあります。
 もし、市中銀行が貸付可能な資金を持たないのに、預金が創造できるからと言って、借用書を受取り、金を預かったと通帳に書けば、不正経理であり借用書の取り込み詐欺です。
 つまり「銀行は「貸出」をすることで、銀行預金を創出します。」という文言こそ、MMTは詐欺理論であることを証明しているものです。


③銀行預金は「預金者の資産で、銀行の負債」。この「貸借関係」が成立した瞬間、貨幣はこの世に生まれます。・・・嘘・騙しの文言です。
 金を預けることが「預金」です。だから預金が預金者の資産であることは間違いないことです。そして預かる側は預金を預り金として負債であると評価します。だからこの関係を貸借関係であるということは間違いではありません。
 そして、MMTでは「預金は貨幣である」という嘘・騙しの主張をしていますので、そのことを「預金で貨幣が生れる」と表現するのです。
 預金とは金を預ける行為であり、銀行はその預かった金を保管するのではなく、又貸しして借入者から利子を取り、その一部を預金者に利息として支払うのです。貨幣(通貨)は所持していても絶対に利息は発生しません。
 この面から見て預金が貨幣であるわけはなく、嘘・騙しの最たるものです。

④「自分の資産、銀行の負債」である貨幣を、振り込みという形で決済に用いることができます。・・・くだらない話です。
 私は決済と清算を切り分けをして、清算とは現金を引き渡すこと、決済とは支払の約束をすることと定義していますが、一般的には決済とは支払うことあるいは支払の約束をすることです。
 従って、現金を渡しても、小切手を渡しても、口座に振り込んでも、クレジットカードを示すことでも、相手が認めるなら約束手形を渡しても、すべて決済です。
 預金は決済の手段として利用できることは事実ですが、上記のように手段は色々とあり、支払者と受け取り者の選択にゆだねられることです。
 ですので、記された文言は実に下らない話であって、もっとまともな話を持ち出すべきでしょう。
 もし、決済に利用できるから預金は貨幣であるというのなら、もはや学説ではなく単なる寝言です。

 以上述べたように、MMTという学説は詐欺と言える中身を持つ、まともにとらえれば寝言といえるもので、その主張を信じれば世に毒をまき散らすことになると私は思っています。

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 三橋氏の今回の言を取り上げたのは、「決済」ということが述べられていたからです。実は「決済」という言葉は経済を語るキーワードの一つである、と私は考えており、そのことを述べるためです。

 「決済」が必要となる状態を作ることとは、「需要=支払い」を作ること、つまりGDPを作り出すことなのです。

 ですから経済を議論する場合、有用な議論とはいかにして「決済」を増やすかということに帰結するのです。
 ケインズが活躍した時代は大恐慌の時代であり、不況の克服が主要なテーマでした。自由主義経済学はそれの対策として労働賃率の引き下げつまり賃下げを主張したのですが、ケインズは「有効需要」を増やすことを主張しました。有効需要を増やすとは結果として決済を増やすことです。
 そして、ケインズの主張が正しいことを証明したのが、日本の高橋是清とドイツのヒトラーです。このことを掘り下げて研究する方がMMTを敷衍するよりはよほど世のためになることです。

 つまり決済をどう増やすかが、経済を解決するための課題なのです。銀行預金や貨幣を議論しても経済の解決策は得られません。MMTの語ることなどクソなことであると認識しましょう。