人口を増やせば、特に労働人口を増やせば、GDPは増えると考えている人は多くいます。
しかし、この考えは明確に間違いです。人口あるいは労働人口とGDPに直接の関係は存在しません。
このことを今日は詳述したいと思います。
なぜかというとGDPは、煎じ詰めると『使ったお金の合計』だからです。人口あるいは労働人口が増えると『使えるお金』が自動的に増えるのであれば、人口あるいは労働人口を増やせばGDPは増えるのですが、そんなことはありません。
GDPを増やすには『使えるお金を増やす必要』があるのです。しかもそのことを誰かの使えるお金を減らすことで成すならば、トータルとして増減はありませんので、無意味なことです。
国民民主党の玉木雄一郎が言っている「手取りを増やす」という政策は、誰かの(具体的には政府の)手取りを減らすことで庶民の手取りを増やそうとしていますので、無意味な政策です。
どうすれば『使えるお金を増やす』を実現できるのか?
そのことは、実に簡単に実現できます。誰かが貯め込んだ金融資産を取り崩すか、あるいは借金をするかで使えるお金を得ることができます。
しかしながら、このことを誰もやろうとはしません。
まず国ですが、代議士と呼ばれる頭の悪い連中が「財政健全化」だとか「子供につけを残さない」だとか、愚にもつかないことを並べ立てて、財政出動というお金を使う政策を否定しており、国民の多くがこれを支持しているのが現状です。
次に企業ですが、いま日本では得た利益を内部留保の積み増し(例えば自社株買い)を行う経営者が立派な経営者と褒められていますので、利益の貯め込みに精を出しており、その結果『使えるお金を減らしている』のが現状です。つまり景気を悪化させることに邁進しているのです。
そして庶民ですが、老後の不安に備えて貯蓄に励んでいるのが現状です。これは『使えるお金を減らしている』行為ですので、景気は悪化します。昔は郵貯に積まれる庶民のお金は政府が借り受けて使う「財政投融資」という政策があり、景気の悪化を防いでいました。その制度を自民党が壊してしまいましたので、処置なしです。
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話が横道にそれましたが、要は人口あるいは労働人口とGDPに直接の関係は存在しませんので、外国人労働者を受け入れるといった政策は、GDP拡大に何の効果もないということを知ることが議論の第一歩として必要なことです。
もちろん、人口総数はその国の経済規模に直結することではありますので、自国民の数を増やす、つまり子供の数を増やさねばならないでしょう。
しかし、昭和20年代中ごろから昭和30年初めごろは、食糧難を背景に「バスコントロール(産児制限)」という政策がとられていたのも事実です。
時代や社会情勢により、人口に対する考えは変わるものなのです。
従って、一人当たりのGDPという尺度が議論に使用されることがあります。
「一人当たりのGDPが韓国にも抜かれた」ので、もはや「日本は先進国とは言えない」という乱暴な意見を述べる人もいますが、偏った見方と言えます。
GDPは活動の結果(つまりフロー)ですので、ストックの豊かさとは無縁の数値です。国の先進性は経済活動のみで評価することは出来ず、学術・芸術などの文化活動も評価する必要もあるし、文化活動は積み上げてきた実績・蓄積(つまりストック)の影響を大きく受けます。
国の先進性は、活動のみならずインフラや社会構造(共産党独裁など到底先進国とは言えない)あるいは社会規範(モラル)なども大切です。
余談ですが、最近の日本のインターネット空間での言論に、モラル崩壊の兆しが見えると私は感じているのですが杞憂に終わればと願う次第です。
色々述べましたが、GDPという統計値の持つ意味を考えていただければと思います。