20.再発防止策(3) 女子部門の創設

 金八先生だけでは、まだ足らぬ。必要なのは、同じ年令、同じ視線、感性だ。

 そこで、事務所に女子部門を創設する。もちろん、アイドルとして成功するためだ。歌やダンスや演技など、いろんなレッスンがあるだろう。原則として、少年と少女は一緒にレッスンを受ける。要するに、同性だけの世界を廃する。少女の目を導入するのである。

 片や、凛々しくて女の子かと思うほど美しい少年。片や、お姫様のように愛らしくゴージャスな少女。おそらく、たくさんの恋が生まれるだろう。アイドルは恋愛禁止、なんて撤回する。その代わりに、少女は愛する少年の見守り役を務める。大人が地位を利用して、よからぬことを企まないかチェックしてもらうのだ。同年代の視線で、監視してもらいたい。

 気になることがあったとき。金八先生役が、周りを人工衛星みたいに回っている。恋する少女と、自分の良心に従う金八先生。これで鉄壁のディフェンスが完成する。また少年にとっても、年令の近い少女は心強いはずだ。恋は実らなくとも、一生の友人になるかもしれない。

 やきもち焼きのファンには、ガーディアン制度 (guardian=守護者、保護者、後見人)だと説明しておこう。決して集団お見合いしてるわけじゃないんだ。少年は少女を好きになるかもしれないし、少年を好きになるかもしれない。それは、人それぞれの生き方だ。個人の意思に任せればいい。

 

21.再発防止策(4) 被害者を犯罪者にしないこと

 金八先生をたくさん集めろだの、少女アイドル業を始めろだの、好き勝手なことを言っていると思われるだろう。しかし、私は大真面目だ。私は、子供に悲しい思いをさせたくない。一生治らない傷を負わせたくない。けれど、それだけが目的ではない。

 私は、犯罪者を生みたくない。よからぬことを考える者が、「警戒が厳しすぎて何もできない」と諦めることが大事なのだ。少年をレイプしたいと思う者が、「犯罪を犯せない」と思うほどの相互チェック体制を構築したい。

 たとえば、キリスト教の教会や学校では、過去から延々と同性への性犯罪が繰り返されている。それは決して、教会の教えや制度に問題があるわけではない。犯罪を未然に防ぐチェック体制が甘かった。それは間違いない。だが根本的な問題は、やはり加害者がかつての被害者であることだ(※)。

 ※ この意見は、統計に基づく事実認定ではないことをお断りしておく。

 

 なぜ被害者は、加害者に変貌するのだろう?先に指摘した通り、

 

「自分もされたんだから、お前もされて仕方ないんだ」

 

 という身勝手さ(=良心の呵責の甘さ)もあるだろう。だがそれよりも、消し去りたいほどつらい記憶が、なぜか背徳的な妖しさとなって煌めくらしいのだ。あるいは、被害者が加害者の立場に代わることで、快さ、愉快さを覚えてしまうのか?いいや、これ以上くだらぬ詮索はよそう。

 ただし、これだけは言える。性犯罪が起こる場所には、継続的に新たな加害者が現れるということだ。すると、J事務所だって同じではないだろうか?何十年間も、組織的に、業界が一丸となって、罪を隠ぺいしてきたのである。前社長がいなくなっても、加害者は生き残っているんじゃないか?あるいは、潔癖な人間が、①世間から隠れて、②圧倒的に有利な立場を利用して、罪人に堕ちてしまうんじゃないか?

 再発防止策とは、悪人を取り締まればいいのではない。善人が悪人にならぬよう、彼を救うことなのだ。

 

22.心の傷を分かち合うこと

 マスコミも世間も、この事件についてはしょせん他人事である。毎日大騒ぎして、関係者を追いかけまわし、古傷を開き、新しい傷を負わせる。そして突然、パッと話をしなくなる。新しい話題が生まれたら、この事件に飽きてしまうのだ。ニュースの価値がなくなるのだ。

 関係者はそうはいかない。心の傷は、なかなか治らない。大騒ぎが終わって、傷口は悪化したままになるだろう。今まで以上に心を閉じて、過去を封印する人もいるだろう。

 しかし、私たちは生きていく。生きていくからには、行動を起こし、問題を改善したり傷の痛みを和らげたりしなくてはいけない。J事務所に関係した人は、内部の人も外部の人も、有志で集まって心を開いてほしい。これまで言えなかったことを、あえて口にしてみてほしい。「心の傷を分かち合う」のだ。

 おそらく、みんなつらかったのだ。被害者も傍観者も。もしかしたら、加害者だって。みんなつらかった。孤独で、苦しかったのだ。世間に公表する必要はない。またバカげた大騒ぎが、夏の台風みたいに通り過ぎるだけだ。それでは、何も残らない。心の傷を分かち合い、分かち合った仲間たちが再発防止に努めること。そうしなければ、悲劇は続く。もしかしたら、事務所そのものが消えてしまう。心の傷は放置され、これからも毎晩痛み続けるだろう。