17.傷に塩を塗るな

 今回の件は、「悲しみを吐き出すこと」が致命的に遅れてしまった。遅れは、どうすることもできないほどに、悲しみを増大させてしまった。その責任は、芸能界とマスコミすべてにある。今回の騒ぎも、BBCが特集番組を放送したことが引き金になっている。日本国内では、誰も触れなかった。 

 海外にバレたら、日本のマスコミは自分を棚に上げて、国会の野党質問のような恫喝まがいの言動を繰り返している。無邪気で無責任な匿名ネット書き込みが、マスコミに同調する意見をばらまいている。

 もしも、今の状況が続いたら?私たちが自省することなく、「今生きている被害者」を叩いたら?

 

「自分も知っていたと言え」

「自分も見て見ぬふりをしたと言え」

「自分もされたと言え」

「どんな風にされたか、詳しく言え」

 

 傷に塩を塗るとは、このことだ。いや、傷に劇薬をかける行為だ。

 マスコミも、自分の「穢れ」を自覚すべきだ。自分の罪を認めるべきだ。間違っても、「正義の味方」面をして、J事務所や関係者を非難批評しないでほしい。自分にそんな資格はないと、自覚してほしい。

 

18.再発防止策(1)隠れない、いじめない

 被害者は、決して強い人ばかりではない。過去の出来事を口にすること、思い出すこともできない人だっているだろう。また、今は強い気持ちでいる人も、北さんのように後で「揺れてしまう」かもしれない。多分、そうなのだと思う。私たちは否応なく、長い時間を生きねばならないから。心に負った傷を、ある時は見つめ、別の時は目を背けて生きるだろうから。

 ゆえに、外部専門家による「再発防止特別チーム」は、”事故調査委員会”になってはいけない。原発事故の原因を明らかにするわけじゃないのだ。”人の心”を、”心の傷”を調べなくてはいけないのだ。調査結果を、記者会見でペラペラしゃべる必要はない。そんなことをしたら、”心の傷”をさらに広げるだけだ。

 したがって、「再発防止策」だけ考えればよい。過去のことは、ほじくり返さなくてよい。

「過去を調査しないで、再発防止ができるのか?」

 できる。なぜならば、この事件はとても単純なことが原因だからだ。

① 加害者が、隠れている。

② 圧倒的に強い立場の人が、圧倒的に弱い立場の人をいじめている。

 この①と②を防げば、事件は二度と起きない。