【詩】「特別攻撃隊」 | 山下晴代の「そして現代思想」

山下晴代の「そして現代思想」

映画、本、世界の話題から、ヤマシタがチョイスして、現代思想的に考えてみます。
そしてときどき、詩を書きます(笑)。

「特別攻撃隊」

悲惨ではあるが
戦争犯罪ではない
国家の軍部が考えた
作戦である
日本人なら老いも若きもおおかたのものは
いまだに知っているこの作戦は
いかに考案され
組織されていったかを
NHKは詳細な「資料」紙と映像
を駆使して
明かした
紙の資料は当然ながらほとんど手書きの日本語
映像の資料は多くがアメリカのものである
太平洋戦争末期
負けが込んできた日本軍は
飛行士としては未熟な二十歳前後の若者たちを
多くの日本人が知っているやり方すなわち
片道燃料の戦闘機で敵の軍艦などに突っ込ませた
はじめはやむを得ない土壇場の思いつきだったが
やがて組織的な作戦に変わった
飛行訓練しているものたちに
「熱望」「望」「否」
かを選ばせた
それは候補者リストにされ
出撃するものが選ばれた
ひとりひとりの若者の意志のほか
出自などが表にされた
学校の成績のよいもの
上から三名は意志の表明にかかわらず
外された
成績下位者もはずされ
真ん中へんから選ばれた
最後は模型のように軽い飛行機に
重たい爆弾をつけて突っ込ませた
最初の「実験」の内容とそれが功を奏したことを
昭和天皇に伝えると
「そこまできたか しかしよくやった」
と答えた という
戦争犯罪でもなくジェノサイドでもなく
もちろんクラウゼヴィッツは
そんな作戦について
一行も書いていない