『ローズの秘密の頁(ぺージ)』──驚愕の美しさを味わってほしくネタバレなし( ★★★★★) | 山下晴代の「そして現代思想」

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そしてときどき、詩を書きます(笑)。

『ローズの秘密の頁(ぺージ)』( ジム・シェリダン監督、

2016年、原題『THE SECRET SCRIPTURE』)

 

 本作のキーパーソン、エリック・バナは、スピルバーグの『ミュンヘン』、(監督忘れたが)『トロイ』などを見てきて、その男っぽさと、その奥にあるマシストな匂いがどうもすきになれなかったが、本作は、その男っぽさが、ある種のミステリーである本作をミスリードして、なかなか迫力があったし、彼の別の魅力が発見されたように思う。

 主役、ルーニー・マーラも、そのエキセントリックな美しさがあまり好きでなかったが、その美を芸術にまで高めていたと思う。彼女の年老いた姿、バネッサ・レッドグレーブは、マーラと、体型(身長はマーラより高いと思う)などが違うとの批判もあるが、ことハリウッド映画では、遺伝的に「似ていること」に重点をおくあまり、かえって、イメージがブレてしまう傾向にあるが、本作では、イメージ的につながった感じで、お芝居なのだからよいのではないかと思った。

 監督は、アイルランド人で、ダニエル・デイ・リュイスの『マイ・レフト・フット』、トビー・マグワイアとジェイク・ギレンホールが兄弟を演じる『ブラザー』などを観ていたが、納得のいくレベルの作品である。共通点は、魂の問題を問うているようにも思う。

 アイルランドが舞台で、アイルランドと言えば、カトリックであるが、イギリスとの紛争まっただ中で、主人公たちは、少数派のプロテスタントであるがゆえに、事件の渦中に巻き込まれ、あげく、ヒロインのローズは、彼女に関心を持って拒否されたカトリックの神父(なかなかのイケメンなのであるが(笑))によって、「色情狂」として精神病院へ送られ、実に40年もの間、そこに幽閉される。電気ショックなどのひどい扱いを受けながら、ローズは、聖書の余白に生きた証の日記を綴っていく。それが、転院のための病状再評価のためにやってきた精神科医の眼に留まり、驚くべき事柄が発覚する。それをご都合主義と批評する人もいるかもしれない。しかし、その医師は、その病院の立地に、懐かしさを覚えてやってくるのだし、なんらかの「記憶」に引かれていたのかもしれない。

 魂の強さを証明する医師、それをエリック・バナが演じるのである。今回、あえて「ネタばれ」を避けることによって、その驚愕の美しさを味わってほしいと思った。