義父がグループホームに入所した日  | kuminsi-doのブログ:笑って介護

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デイサービスの迎えの車が来る。  

「とうちゃんは行かねえだか」 

義母はデイサービスに行く支度をしてキッチンの勝手口に向かう。 

「おじいちゃんは歩けないほどに具合が悪いから、おばあちゃんと違うお医者様に行くんだよ」 

私は答える。 

「ほー、そうかね」 

義母はそう一言ってお迎えの車に乗って出て行く。 

  

私と夫は義父の入所用の布団一式、着替え、タオル類、食器類を車に積む。 

 

「おじいちゃん行くよ」 

私は義父に声を掛ける。 

義父は部屋から出て来たがキッチンの椅子に座ってボーとしている。 

今日は義父をグループホームに入れる日だ。 

  

「じいちゃん、立って、こっちだよ」 

夫が義父に声を掛ける。 

「何処に行くだ。どこに向けばいいだ」 

義父は得意の涙声で訴える。 

「こっちだよ」 

私が義父の手を取りキッチンの勝手口に誘導し、いつもの椅子に座らせる。 

夫が義父の靴を履かせ、義父の手を取り車に乗せる。 

  

私が家の鍵を閉め車に乗り込む。 

  

さあ、グループホームに出発。 

  

義父は何も言わずに乗っている。 

  

グループホームに着き義父を車から降ろす。 

グループホームの職員さんに手を引かれ義父は入って行き、席に座らせてもらう。 

  

義父は何も言わずに机に頭をのせてつっ伏し動かない。 

 

義父には入所する話は全くしていないが義父は何も言わない。 

何か感じるものはあるのだろうか??? 

  

私は義父の荷物を持って義父の部屋に行く。 

 荷物を全て入れ終わり、義父の隣を通るが義父は何も言わず、相変わらず机につっ伏している。 

 

「よく見てもらうだよ」 

夫は契約を終え、帰る前に義父に優しく声を掛ける。 

「・・・」 

義父は何も言わない。 

 

どうなっているんだろう??? 

大丈夫かな??? 

 

義父は昨日の夜、家で「俺は家に帰りたい」と夫に訴えていた。 

自分がどこにいるか分かってるのかな??? 

分からないままここに馴染んでくれるといいな~ 

 

私と夫は義父を残し帰る。 

 

 さて、私たちの心配は義父ではない。義母である。 

  

きっと今日デイサービスから帰ってきたら「とうちゃん、とうちゃん」でうるさいだろう。 

今晩は覚悟しないと。 

  

義母がデイサービスから帰って来た。 

「おかえり」 

私がデイサービスの送迎の車から降りる義母に声を掛ける。 

「ありがとうございました」 

義母は私に丁寧にあいさつをすると、送迎の車が出て行くのを見送る。 

  

「おばあちゃん、夕飯には早いからお茶にする?」 

私は義母に声を掛ける。 

「お腹が空いたでね。これは旨そうだ」 

義母は何時も義父が座る席に座ると直ぐにお菓子を見つける。 

 これは、先日夫の妹が持って来てくれたチーズケーキであるがペロっと食べる。 

  

食べ終わると直ぐに立ち、お菓子の入っている茶箪笥を開け飴を見つける。 

  

「姉さん、1個やるはね」 

義母は私に飴をくれる。 

「私はいいからおばあちゃん食べればいいよ」 

私は断った。 

「飴だぞ、いいじゃないか」 

義母は更にくれようとする。 

私は今義母と一緒にチーズケーキを食べ終えたところである。 

流石に飴はいらない。 

 

「おばあちゃん食べればいいよ。まだ早いから、夕飯になったら呼ぶから、炬燵にあたっていて」 

私は飴を断り、義母に頼む。 

「そうか」 

義母は気に要らないらしく、キッチンを出て外のトイレに行く。 

  

私はキッチンに居るとまた義母がお菓子をあさるので、ストーブと電気を消して2階に行く。 

  

暫くして夕飯にした。 

「おばあちゃん、夕飯だよ」 

私が義母を呼ぶ。 

  

義母はデイサービスから帰って来たままのダウンジャケットで炬燵で、農協の雑誌「家の光」を見ている。 

  

最近、義母は寝るまでダウンジャケットを着ている。 

義母の部屋はファンヒーターを焚いているが寒いのかな??? 

  

夫と義母と3人で夕食にする。 

義母は何故か今日はいつもの義父の席で食事を始める。 

「かぼちゃは旨いな」 

義母は大好きなかぼちゃにご満悦である。 

  

私は食事が終わり、片づけると明日のご飯を仕掛ける。 

  

義母の口から「とうちゃん」と言う言葉は未だ聞かれない。 

私は刺激をしないように2階の部屋いく。 

  

「今、ばあちゃんはご飯を持って自分の部屋に行ったぞ」 

ゆっくりと晩酌をして、夕飯を食べ終えた夫が2階に来る。 

  

その後夫はトイレに下に行く。 

「家の鍵も閉めたし。電気も消えた。ばあちゃんは寝てるぞ」 

夫は2階に戻って来る。 

  

え… 

  

「とうちゃんと」は一言もなく寝てしまった。 

  

おばあちゃん、おじいちゃんの記憶はないの??? 

  

義母の記憶から今日は義父は全く消えてしまったようだ。 

  

義父はグループホームでどうなったかな~ 

  

あっけなく義父のグループホームの入所初日が終わった。 

  

これで良かったのかな??? 

 

次の日の朝 

寝ている義母の部屋を覗くと義父の布団が何時も寝ているところに敷いてあった。 

やっぱり義父を気にしているのかな??? 

 

義母が起きて来る。 

「寝坊をいたしました。申し訳ありません」 

いつもの義母である。 

 

義父の布団は夫がか片付けた。 

 

義母には義父が施設に入所したことは言っていない。 

義母は義父のことをどう思っているのだろうか??? 

今までの習慣で義父の布団を敷いただけなのかな~ 

 

グループホームには義父の為に新しい布団一式を持っていたので、今でも義父の布団は家に居たときと同じように残っている。 

 

暫くはこのまま義父の布団を残し様子を見ることにしよう~ 

 

どんなに私たちが色々に憶測しても、認知症の義母の思いは理解できないよな~