コロナによる義夫の奇怪な行動  | kuminsi-doのブログ:笑って介護

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«コロナによる義夫の奇怪な行動 »

 

「俺はな、会いに行かにゃいかんでな」 

義父はそう言いながら私の前を通って行く。 

「おじいちゃん何処に行くの?」 

お茶の用意をしようとキチンに入った私は、慌てて義父に声を掛ける。 

「おら約束があるで、そこまで行って来るで」 

義父がキッチンから出て靴を履きだす。 

 

日頃はキッチンの入り口の出た直ぐに椅子があり、そこに座って靴を履くのがお決まりとなっている。 

しかし今日は入り口の取っ手をつかんだまま靴を両足に通し、靴のかかとを踏んだまま外に出て行く。 

それもふらふらと壁や手すりを伝って歩くのではなく、自力で安定した歩きで出て行く。 

 

「約束って誰と?」 

私は訳が分からずに聞く。 

「そこのいつもの人せ」 

義父は何かに取り付かれたようである。 

「何処に行くの?」 

更に私は聞く。 

「そこまでせ」 

義父は答える。 

「コロナで熱があるんだよ」 

私は義父の体調を気遣う。 

「昨日約束したもんで行くだ」 

義父は熱で頭の回転が上がり体調が良いと思っているようである。 

「昨日も熱があって寝てたんだよ」 

私は義父の体調の悪さを説明する。 

「昨日約束しただ、どうしても行くだ」 

義父は言い捨てる。 

 

かつて良く歩けた時の歩きっぷりでスタスタとなんの疑いもなく畑の奥に向かって歩いて行く。 

 

どうして今日はこんなに早い、熱でエンジンがオーバヒートしているから??? 

 

「おじいちゃんどこ行くの?」 

私は義父の後ろ姿に声を掛ける。 

「約束せ」 

義父は振り返ることなく叫びながらまっ直ぐに歩く。 

「行かないよ!」 

私は叫ぶ。 

「ちょっと行くだけだで、待ってるでね!」 

義父はなおも歩みを止めずに叫ぶ。 

 

義父の姿を追っていくと、畑の草取りをしている義母が目に入る。 

 

え?? 

義母は草取りしてるの??? 

 

義母はコロナで38度の熱があるのに??? 

義父も義母も頑張るな~ 

認知症ってコロナで頭が活気づくのか??? 

 

体への打撃は無いのか??? 

 

 

義父はスタスタと我が家の畑の先まで軽快に歩く。 

畑の先はアパートの駐車場である。 

今日は駐車場に車が1台止まっている。 

 

義父は駐車されている車の前に行くと、突然歩みを止め、車を触りだす。 

中をじろじろ見て、車の周りを歩き出す。 

 

え??? 

何やってるの??? 

知らない人の車なのに??? 

 

これはまずい! 

私は慌てて義父のところまで走って行く。 

 

「おじいちゃん、家に帰るよ」 

私は義父の後ろに回り両脇をつかみ、グイッと90度回転させ、我が家の畑の方角に体を向ける。 

 

「俺は会いに行かにゃいかんで」 

義父はそう言うと今度は駐車場から畑に向かって、今来た道を引き返す。 

 

え??? 

何がしたい??? 

 

「俺は会わにゃいかんだ」 

義父はしきりに訴える。 

「約束だでな、行かんといかんだ」 

義父は駐車場から出て我が家の畑の畔に戻った。 

畔にある溝に足を突っ込む。 

 

この溝は畑に水を掛けるために瀬下から引いているもので、使うときだけ水を流している。 

今は冬なので全く水を通していないため、からからに乾いている。 

 

義父はそこに両足を突っ込み、隣の家のフェンスを掴むとそれを支えに、溝を歩き始める。 

 

どうしてそんなに狭いところに足を突っ込んで歩くのだろうか??? 

 

溝は義父の足のサイズより小さいためにカニの横歩きとなりバランスが悪い。 

バランスが取れない分フェンスにつかまりバランスを取ってよちよちとゆっくり歩く。 

 

「俺は会わにゃいかんだ。約束だでな、行かんといかんだ」 

義父は呪文のように唱えながら畑の溝をよちよちと歩き続ける。 

 

 

隣との境のフェンスが終わると義父は体の向きを変え、キッチンの扉に向かって歩きだす。 

 

キッチンの勝手口まで来る。 

 

「おい、入らないのか?」 

義父は突然止まり、私に聞く。 

 

どうした??? 

 

「おじいちゃん入らないの?」 

私が義父に聞く。 

「入ってもらっていいぞ、入りゃいいじゃないか」 

義父はそういうと、さらにキッチンの前を通り過ぎ、道に出て行こうとする。 

 

え??? 

 

「どこ行くの? 家に入らないの?」 

私は義父に聞く。 

 

「俺は会わにゃいかんだ。約束だでな、行かんといかんだ」 

義父は更に歩く。 

 

「おじいちゃん、お茶を飲んでから出かければいいよ」 

私はそう言いながら義父の背後から両脇を持ちグイッと体を180度回転させる。 

 

「おお、そうするわ」 

義父は突然納得し家に入る気になった。 

 

義父をキッチンから家に入れ、義両親の部屋に誘導する。 

 

「今、お菓子とお茶持ってくるからね」 

そう言いながら私は義父を炬燵に座らせ、ファンヒーターを付ける。 

 

義父にお茶を出すと義母を畑に呼びに行く。 

 

義母を連れてくると義父はすでにお茶も飲まずに、炬燵にどっぷりと浸かり横になって寝ている。 

 

え??? 

どういうこと??? 

力尽きたのか??? 

 

「とうちゃん、お茶を飲みましょや」 

義母は炬燵に入りながら義父に声を掛ける。 

 

義父はもうすでに寝ていて返事はない。 

 

今の騒ぎは何だったのか??? 

 

「姉さんも一緒にお茶を飲みましょや」 

義母は私に声を掛ける。 

 

「コロナが移るから、別のところで飲むから」 

私は断る。 

 

「姉さんも一緒に飲めばいいに、ここは暖かいでね」 

義母は親切なのか??? 

「いいから」 

私は断る。 

「茶碗を持って来るで」 

義母は立ちあがりキッチンに湯のみ茶碗を取りに行こうとする。 

 

「いらないから、座ってお茶を飲んで」 

私は義母にお願いする。 

「でもな、姉さんがかわいそうだで」 

義母は心配している自分に酔いしれている。 

「コロナが移るからいらないから」 

私は慌てて部屋を出て行く。 

「姉さん、一緒にお茶を飲むじゃねえか」 

義母はしつっこく、部屋を開け私の後をついてくる。 

 

コロナにかかって熱があるからか??? 

いつもよりしつっこいな~ 

 

「姉さんはこれから買い物に行ってくるから」 

私は家を出ることにした。 

「そうかい、お茶を飲んでから行きましょ」 

義母は更に引き留める。 

「行ってくるから!」 

私は強い口調で言う。 

「そうか、お金をやるで」 

義母は更に食い下がる。 

「いらないから!」 

私は逃げるように2階に行き、カバンを持って家を出る。 

 

二人ともコロナで頭が活気づいて大変。 

 

コロナにかかってもこの元気さ。 

熱がある自覚は無いのかな??? 

認知症がすごいのか??? 

この二人が超人なのか???