異次元を見ていた人。~ ジョルジョ・デ・キリコ 。ダリが憧れ、ピカソが恐れた画家 | HSP2.0・育成者、支援者、サポート者のための〜非認知能力アップ実現のためのポリヴェーガル理論理解

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敏感、繊細、感受性の高いHSP(highly sensitive person)が、生まれ持った感性と強みを仕事に活かして生きていくことをサポート。
日本で最初にHSPとポリヴェーガル理論を結びつけ、生きづらさは自律神経系のケアで解消できることを説いている。

 

国家資格キャリアコンサルタントで強みの専門家
ボディワーカー、心理セラピストの3つの顔で活動しています、
皆川公美子です。

テレビの番組で、イタリアの画家ジョルジュ・デ・キリコのことをやっていて、

ものすごく心を揺さぶられたので、書きます。

彼の人生について、書きますね。



*絵画はホンモノを目で見るときに、はじめて伝わるオーラ、色、エネルギーを持ちます。
こちらのブログに載せる絵画は「この地上にそういう絵画が現存している」ということのひとつの
ご案内ですので、どうぞ画家が描いたホンモノをご覧になってくださいね。


まず、ジョルジュ・デ・キリコって?
 

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image(若い頃)

 

 1888年7月10日 - 1978年11月20日は、イタリア画家彫刻家形而上絵画派を興し、後のシュルレアリスム(ダリとか)に大きな影響を与えた。

ギリシャ生まれの彼は

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若い頃から絵の才能を発揮しました。




 

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「通りの神秘と憂鬱」1914年  26歳の時の作品

この絵のもつ、一種異様な感じを受け取ってみてください。

時間が止まっている感じがしませんか?(う~~~ん、PCモニターだとそこが薄いかな)

強い日差しの中、遊んでいる女の子はなぜか「影」です。
遊ぶ影についた影があります。
そして行く先には大きな影、でも誰が待っているのかわからない。
白い壁、異様に照り返しの強い感じ、
そして全く人気のない感じ。
 

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技法としては、遠近法がおかしいのです。
集束するべき一点が、ずれています。
それが一種異様な感じを与えることに一役買っています。

 




あ~~~この時間のない絵の世界を
見たことある!
と思われた方はいらっしゃいませんか?
多分幼いころにそれを見た、またはキャッチしたことのある人は
いらっしゃるのではないでしょうか?
私も小学校か中学のときに、見たことがあります。

時間が止まっていて、
空気がやたら実体のない感じ。
人気がなくて、温度があるのかないのかわからない。

明らかに異次元ですが、
多分この世と同時に存在しているパラレルワールドなのではないかと思います。
(パラレルワールドは無限数存在していると言われています)


で、キリコはそういう、目に見えないものをキャッチして生きていた
五感を越えた異様な絵を描いていた。
という仮定のもとに、
この記事をはじめますね。
 
 
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「イタリア広場」1968年  80歳


 
 
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「吟遊詩人」 1960年代
 
 
 
 
キリコは23歳でトリノに移り住みます。
 
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「懐疑的な静物」 1916年  28歳


キリコはこのような自分の絵画を
「形而上的絵画」と名付けます。
ニーチェやショーペンハウアーという哲学者たちと交わり、
ダリから憧れのまなざしで尊敬されていました。
シュルレアリスム=現実をこえ、人間の無意識の部分を
表現する、ことに没頭したのです。
 
 


 
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カルロ・カッラ「メタル・フィジカル・ミューズ」   1917年

そのころキリコのことを中傷した一人、↑カルロ・カッラは
自分こそシュルレアリストで、キリコは二番煎じだと決めつけました。
 
(カッラの絵には、明らかに時間が流れています。
キリコの絵に憧れ、嫉妬し、模倣をしたのでしょうが、、、
なぜか異様な感じを受けません。
キリコの時間のない異次元の絵とは根本的に違うのに、
当時の人はわからなかったのだろうか???)
 



 
誹謗中傷を受け、立ち止まったキリコは
古典へ立ち返ることにしました。

絵の具の研究からはじめて、
筆遣いや描き方すべてをやりなおし、したのです。
それが、30歳すぎでした。

静物画を描くことで、目の前の現実と向き合おうとしたキリコ。
「目のまえの現実」を描こうとしたのかもしれません。
感覚でキャッチしたもの、よりも
現実のこの世界で生きる、
ということに一生懸命フォーカスしたのだと思います。

「偉大な画家とは何かを知った。
私は描かれたイメージしか見ていなかった。」

  by キリコ
 

反省するキリコ。けなげな努力

 
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↑作風が同じ画家のものとは思えませんね。↓
 
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「赤と黄色の布をつけた座る裸婦」
 
 
 
 
 
 
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キリコには大きな謎があります。

 
 
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晩年になって、左の初期の自分の絵画、

を全くそっくりに模倣して 右の絵画にしました。

当時、形而上学的絵画が売れてきて、高値がつくようになり、
画商たちがキリコに「もう一度、形而上的絵画を描いてくれ」と
頼んだのです。

(けれど、絵から受ける印象がまったくちがいますね!)
 
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左が初期の作品、右が晩年。
 
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右の絵の 描かれたキャンバスの下に日付がありますが、
日付まで、過去のものに戻してあります。


「キリコは昔のものの、煎じ直しを売りさばいている」と
またここで誹謗中傷を受けるのですが、
それはきっと、キリコを疲弊させたことでしょう。

 
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キリコはそのころ十分に売れている画家でしたし、
他に描きたい題材もあったでしょうが、奥さんの説得もあり、
昔の形而上的絵画をまた描きました。
けれど、同じものを描いていても作品は無二のものであると
キリコは知っていたのでしょうか。

どのような気持ちで自分の絵画の複製をしていたのか、
本当のところは誰もわかりません。

彼は見えてしまう異次元をどうとらえていいか、
わからなかったのかもしれない。
今一緒にいる人と生命を謳歌することを
選びたかったのかもしれない。
けれど、そのまま若い頃のような「形而上的絵画」を
描き続けていたらどうだったのでしょうね。



キリコに大きな影響を受けた、

アメリカンポップアーティスト アンディ・ウォーホールは

彼の繰り返しを非常に良いものとして

受け入れました。
 
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「キリコは生涯、ひとつのイメージを繰り返した。
人生というものは一つのイメージを繰り返しながら、
変わっていくものだと思わないかい?」




 
 
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亡くなる3年前の作品です。

なんともいえず悲しそうな動物。
その動物は、地上の造形物で埋め尽くされています。

様々な過去と渡り合ってきた、現在の自分。


キリコは五感を越えた、何かのキャッチ能力を持っていたのではないだろうか。
それをイメージとしてとらえ、キャンバスの上に描いていた。
ピカソは彼を恐れたと言いますが、同じ芸術家には
キリコが見えないものからもイメージを引っ張ってくることには
脅威をかんじていたことでしょう。

けれど、見るからに繊細さんのキリコ。
自分がやっていることと、世の中の「常識」のずれを
なんとか埋めようと思っていたような気がします。

だから古典に回帰してみたり、
いろいろ作風を変えてみたり・・・・

晩年に、初期の作品の模倣をするころには
何かしら悟りの境地、に入っていたような気が
しないでもありません。


キリコは90歳で人生の幕を閉じました。
当時より、キリコの独自世界を「すんなりと」理解する人は増えていることと
思います。

2014年に書いた記事でしたが
2024年またキリコの大回顧展が開催されています。

 


わたしも行きたいと思います!



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2014年12月16日まで 東京・汐留のパナソニック・汐留ミュージアムで

「ジョルジュ・デ・キリコ」展を開催しています。  詳細はこちら