テレビ地上波でシャンソンを歌える。
いや、シャンソンという言葉、そして越路吹雪さんの映像と歌が流れる。
そのことの幸せに胸が詰まった。

「うたコン」で私の歌った「サントワマミー」は、人生で初めて人前で歌ったシャンソンだ。
その時から今まで、この歌をツラツラと歌ってきたのだったが、テンポも速くし、明るい歌のように歌ってきた。

失恋の歌なのに、なぜ明るく歌ってしまうのか、そのことにほとんど気を止めることもなく、今回この歌を歌うことになったのだが。
ここで立ち止まることになった。
この歌ってどういう歌だっけと、越路さんの映像を見返し衝撃を受けた。
そうだった、これだこれだ、これが私の惹かれた越路さんだと思った。

岩谷時子さんの歌詞の奥深くを、心を水のようにタプタプと揺らせながら歌にする。
水面のように、感情のひだが、波が色を変えるように続く。
人の心は常に揺れ動く、それを歌にできる稀有の人が越路吹雪という人だった、そのことに、今更に驚き感動した。

そして、そういう越路さんに憧れ、シャンソンの右も左もわからぬまま、小娘は歌い始めたのだった。

そんなあれこれを思い出しながら「サントワマミー」を、原点に帰り歌うことができた。
こういう機会を与えてくださった方々に感謝したい。

そして、放送後にSNSでたくさんの声を寄せてくださった皆さまにも感謝を。
シャンソン、この言葉が今の時代に飛び交っている、そのことだけで胸がじいんとして、これからも歌っていこうと思えた。

今月30日には、BS朝日で「ニッポン•シャンソン」という番組の、司会も兼ねて歌っています。
出演者は、元宝塚スターでミュージカル俳優の安蘭けいさん、シャンソンに目覚め歌われはじめた松村雄基さんなど、若手のかたやら、個性的な活動をされているかたがたや、そして、スペシャルゲストに松田美由紀さん。
亡くなったご主人の優作さんを胸に歌うバルバラの名曲は必聴です。
夜9時からの2時間、どうかご覧ください。
シャンソンって、なかなかいいもんだなあと思っていただけることを願っています。