昔の自分に会った

テーマ:

TBSラジオのFine!!という番組収録にうかがう。

 

パーソナリティーの池田めぐみさんは、打ち合わせでは何も言わず、本番で次々にサプライズを出された。

 

その一。

先日のビルボードライブのチケット。

 

初めてシャンソンを聞いたということで、たいそう感動してくださったとのことに、うれしく感謝。

 

 

その二。

なんと、30年以上昔の「レ・ミゼラブル」のパンフレット。

 

初演のものなので、もう貴重品といってもいい。

 

「ここに、クミコさんが」

と開かれたページには若き私の写真と紹介文。

 

 

むむ。若い。

若いのは、姿だけでなく、そこで言ってることも。

 

 

のっけから「ミュージカルなんてすきじゃなかったんです」。

 

「所属事務所が勝手に応募したので怒りながらオーディション受けたんです。」

まあ、それはそうだけど。

 

あげく。最後に「世代のせいかメジャーはイヤだと思ってきたので、いま反省してます」の結び。

 

 

 

なんだこりゃあ。

 

 

こんな「やさぐれ者」をよく雇ってくれたものだ。

 

 

若き日のことは、たいてい恥ずかしい。

 

よくもこんなことと思うことばかり。

 

 

あんたねえ、よくそんなんで生きてきたねえ、この世界。

周りの人たちに感謝しなさいよ。

 

と、その頃の自分にいってやりたい。

 

 

 

でも。でも。

この「こわいものしらず」

やっぱり、なんだか愛おしい。

 

 

 

そして。

わざわざパンフレットを探して持参してくださった池田めぐみさんに感謝を。

 

ありがとうございました。

おかげで昔の自分と会えました。

 

 

 

 

 

ニンゲンで良かった。

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歯の調子が悪い。

 

しみたり、重かったり。

 

噛むのが苦痛になって、食べ物をつい早く飲み込んでしまう。

これはいかん。

 

 

胃の調子も悪くなってきた。

 

 

で。

メンテ以外にはかからなかった歯医者さんに行く。

 

先生に診てもらう。

 

 

ずいぶんとすり減ってますからねえ。

 

もう何十年ものお付き合いになる先生が奥歯を見ながら言う。

 

 

この人には全幅の信頼を置いている。

 

 

その腕が確かだということはもちろんだけど、患者への対応に波がない。

 

時に日替わり気分の医者もいるが、そういうところがまるでない。

 

 

これはすごいことだと思う。

何十年も、同じように丁寧に患者と接するというのは、なかなかできることではない。

 

 

 

これは、たとえば美容師さんなんかも同じで、長くきっちりと続いている店というのは、その人物によるところが大きい。

 

私がお世話になっているかたなど、まさに。

 

多くの従業員をたばねながら、気分にムラのあることがない。

 

いつも同じように丁寧だ。

 

 

 

同じように。

丁寧に。

 

 

これは人と接する職業では、一番大切なことかもしれない。

 

 

ニンゲンだもの、日によって気分は違う。

いろいろなことがあれば、それこそジェットコースターのように、気持ちは変わる。

 

 

でも、そこで踏ん張って、お客の前では「同じように」できるかどうか。

 

ここが分かれ道なのだろう。

 

 

 

「神経を抜かなきゃならないかもしれませんねえ。

次回に時間をとって治療しましょう」

 

はい、わかりました。

 

 

 

そうか、やっぱり歯だって消耗してるんだよなあ。

すり減っちゃうんだよなあ。

 

 

歯がダメになって獲物が獲れなくなった、哀れなライオンの姿が浮かんだ。

 

 

ああ、ニンゲンで良かった。

 

 

 

 

 

 

 

ビルボードの夜は更けて

テーマ:

初めてのビルボードライブ東京。

 

夕方と夜との二回公演。

 

 

まあ、なんて楽しい。

 

ゲストに川島ケイジさん、山下伶さん。

そしてエジソンさん。

 

 

ケイジさんとは三曲のデュエット。

伶さんは、クロマティックハーモニカ。

エジソンさんは、篠笛。

 

 

こうして、いろんな音が満ち。

 

バンドメンバーもしばらくぶりのギター久保田さんと、初参加のフルート坂上さん。

 

ますますいろんな音が満ちる。

 

 

 

ビルボードは、チケットレスで、席の具合も様々。

私のような昭和アナログニンゲンには、どうしていいのかわからなそうなのに、たくさんのお客さまが来てくださる。

 

時間とお金を使って、来てくださる。

 

 

もうこれは奇跡だなあと思う。

 

ほんとはそんなふうに思っちゃいけないだろうに、思っちゃう。

 

ありがたくてしかたない。

 

 

 

 

今回はほとんどシャンソン。

 

 

バルバラの「黒い鷲」、アズナブールの「世界の果てに」、ゲンズブールの「ノワイエ(溺れるあなた)」。

 

どれももう十年ぶりくらい。

 

空に消えた黒い鷲とか、世界の果てにある何かとか、残酷な愛に溺れる男と女とか。

 

 

そんないろんなものが見える。

 

 

新しいアルバムから「18歳の彼」も。

しょうもないだろう、そんな恋、と思うのに、唄っていると涙が出そうになる。

 

 

シャンソンは、遠い歌じゃない。

 

誰のココロにも入れる鍵を持っている。

 

どこかの扉を開けられる鍵を持っている。

 

 

 

私自身がもう若くない。

若くないから、わかってきたことも多い。

 

鍵の形をたくさん用意できてきた気もする。

 

 

若い時には一つか二つしかなかった鍵を、だんだんに増やしてこられた気もする。

 

 

だからこそ、聞いてもらうお客さまのココロの扉を、少し開きやすくできるようになったかもしれない。

 

 

時は無駄じゃない。

 

 

シャンソン歌手といわれることがイヤで逃げてきた私だけど、ナンチャッテシャンソン歌手とばかり言ってきた私だけど。

 

もう少しきちんと向き合おう。

もっと唄おう。

 

 

 

そんなこと、思えた、気づけたライブになりました。

 

 

皆さま、ありがとう。