メッカ巡礼で巡礼者がたくさん亡くなったと聞く。
最高気温51度にもなる道中、熱中症でバタバタと倒れる。
そのニュースを聞きながら、でも、きっと彼らは幸せな顔で天に昇ったのではないかと思う。
道半ばというより、殉教者の幸せ。

知人の母上が亡くなった。
施設で数年を送り、最期は何も食べず飲まず、枯れ木のように天に召された。
そのお顔はツルツルと美しかったという。
これは私の思う理想の召され方だ。
生き物は食べられなくなったら終わり。
こういう亡くなり方は、自然で苦しみがない。

父親の施設でも、最期の対処を聞かれている。
もちろん延命処置の一切をしないことを伝えた。
ただ、モノゴトは誰もが同じではない。
天への道順も、おそらく一人一人が違う。
父のように病気との兼ね合いがあると、それが治療とも重なり、判断はより難しくなるだろうと思う。

延命処置など望んでいなくても、結果的に治療行為が延命処置になることもあるだろう。
世の中のことは、こうしておしなべてグレーだ。
白でも黒でもない、グレーがほとんどだろう。

これからの数年間は、母も含めて、この狭間で悩むことが増えそうだ。
グレーは奥深い。

そういえば、数年間から青みがかったグレーのパンツに心惹かれている。
目の前に、そういうパンツを履いた女性を見て、あ、これ欲しいと噴き上げるように思った。
あるようでないのが、またいい。
手に入れてないのも、恋に似ていていい。
これはグレーの楽しみ。