父親のホームに行く。
このところ週一くらいのペースになっているが、本当はもっと多く行きたい。
私が行ったことも、その後忘れてしまうのだとわかっていても、行ってあげたい。
これが父親にできる私の愛のカタチだ。

父親は、入院を繰り返し、そのたび弱くなってはいるが、もともとの頑丈さのおかげで、また持ち直す。
顔色も良くなって、気弱になるのもその時ごとの気分の変化だと思える。
一日一日と変化する気分は、私たちとて同じ。
そう思えば、深刻にならずにすむ。

昨日あたりは、髪がすっかり短くなって、気持ちが良いと言えば良いのだが、どこか寂しい。
白髪まじりのアタマをいつものように撫でると、どこか野球少年ならぬ野球お爺さんのよう。
「ずいぶんサッパリしたねえ」

こうして父親のホーム入居からもう二年半が過ぎる。
予想よりボケ具合も進まず、ただ、出ていたお腹はひっこみスマートになった。
変わったのは脚で、歩くには両手を引かねばならない。
「来月は誕生日だよ」というと「24だなあ」と言う。
そう、24日が誕生日。
エンジニアだったせいか数字系の記憶は弱まらない。


帰って母親の入浴タイム。
お腹が膨れているので、そのあたりを泡石鹸で洗う。
「いっときは小さくなったのにねえ」と言うので「お腹が出てるうちは大丈夫だよ」と励ます。

父さんのお腹も母さんのお腹も、元気でいてくれればいい。
スマートでもポンポコでも、いい。