ヤモリと出会ったことは、先日ここでも。
で、母親と遭遇しないことを祈っているということも書いた。

が。やはり遭遇は避けられなかった。
昨日、母親をお風呂場に連れて行こうとしていると。
「昨日、大変だったのよお、いたのよお」
いたのは、もちろんヤモリだ。
「それ、ヤモリだよ、家を守るからヤモリ」
そう言っても、気持ち悪い気持ち悪いの一点張り。
どうやら、母親はヨタヨタ廊下を壁づたいに歩いていて、端っこにじっと避難していたヤモリ君を踏んづけたらしい。

ひゃあ、もうびっくりして、どうしようかと思った。
まあ、とりあえずひっくり返らなくて何よりではあった。
ヤモリを踏んづけて転倒など、シャレにならない。

にしても、ヤモリ君が気の毒でならない。
避けてくれると思っていたら、踏まれるとは。
幸いぴぴぴと逃げたらしいから良かったし、おそらくトカゲのように、どこかがダメになっても修復能力があるだろう。

パパがいないからこうなる、と母親が訳のわからないことを言うので、もう家も古くなると出てくるんだよと、言っておく。
だいたい、母さんがモソモソと廊下歩いてくる様子だって、相当にアブナイよ、とも言っておく。

何もかも、誰もかも、みいいんな古くなるのだ。
そういう所には、ヤモリだって、昔はヘビだって一緒に住んでいただろう。

「そうそう、水戸の家じゃ壁の穴から青大将が首出してたわあ、ああいやだ」と、母親が首をすくめるように言う。

土の上に建っている家なら、そりゃあどうしたっていろんな生き物がやってくる。
それは、幸せなことだと思う。
土から離れて生きるのは、どこか欠損しているような気持ちになる。

この冬は、昨年のカエルが来なかった。
そのかわりヤモリが来た。
みんな一緒に生きている。

母さんには気の毒だが、一世紀を生きようとするニンゲンとして、腹をくくってもらわねばならない。