母親の家でヤモリと出会った。
掃除をしていると、ドアの後ろあたりに白いちっちゃいモノが見える。
あんまりちっちゃくて、あんまり白くて、あんまり目が黒く大きくて、それがなんだか一瞬わからなかった。

お前、だれ?と聞いてみる。
いや、そいつだって自分が何者であるか知らないだろう。
ただ、災難が早く去るのを待っているのだろう。

クモに出会った時には、必ず捕まえて逃す習慣のある私は、クモとはサイズが違うのに困った。
クモは透明なグラスかコップで捕まえ外に逃す。
でも、この白いヒョロリとした生き物は、どうやって捕まえたらいいだろう、と迷っているうち、どこかに消えてしまった。

あれはヤモリはイモリか。
さっそく調べると、ヤモリは爬虫類、イモリは両生類とあって、お腹が赤いのがイモリ。
やっぱりヤモリだった。
そしてヤモリは家守とも書く、家の守り神でもあるらしい。
神は大袈裟だが、害虫などを食べてくれる生き物らしい。

それから、その白いヤモリは時々現れた。
風呂場と洗面所あたりにも。
うちは、シロアリ駆除の薬が床下に撒いてあるので、もしかしてヤモリのエサが少ないかもしれない、そう心配になって、この前遭遇した時には手で捕まえようとしてみた。

ヤモリの肌は、思っていたとおりサラリとして、気持ちがいい。
でも、捕まえられるようなヤワな生き物ではなかった。

まあいい、この家のどこかで、何かを食べて生きていられるなら、それでいい。
ただ、このことは母親には言っていない。

ヤモリと一緒に暮らしていることは言わないほうがいいだろう思う。
あんなに可愛いけど、しょうがない。
願わくば、母親と遭遇しませんようにと祈るのみだ。