風呂場の介助用椅子が届く。
とはいえ、注文制なので、とりあえず貸し出しをしてくれるという。

来てくれた業者さんは、モップなどいろんなモノを貸し出ししている有名な会社。
そうか、こういう介護保険に関した仕事も手広くしているのだなあと知る。

担当のおじさんは、親切でしかもおしゃべり。
母親を見て、こんなにしっかりした96歳は見たことがないと言う。
これは百歳越え間違いなしと言うので、区から表彰状来ちゃいますねというと、以前は副賞が金杯だったが、何しろ人数が増えたので今は銀杯らしい、いやいやこれからは銅杯になるかもと笑う。

そのおじさんのお母さまは、最近施設に入ったらしい。
信州で一人暮らししていたが、なんせ寒いし、コタツから出なくなって、どんどんボケてしまったらしい。
男兄弟3人は、代わりばんこに行ってはいても、心配でしょうがない。
何かあったら大変と、感知センサーをつけたら、何を見張ってるんだと怒る。
そんなこんなで、やっと施設入所を承諾したが、入ってみたらすっかり気に入ってご満悦。
(そこは認知症の方が少人数で生活するグループホームだというが、この形はどこでも人気がある)

「肩の荷が下りた気持ちです」
おじさんは、晴れ晴れとした笑顔で言う。
そうなんだよなあ、わかるなあ。
長い間背負っているものを、下ろしたくなる気持ちってすごくわかるなあ。

親も子の荷になりたいとは思わないだろうが、結局そうなってしまう。
子のいない者は、自分で何とかせねばと覚悟しているが、子に頼ってきた人はそうもいかない。

肩の荷を下ろしたら、どんなに楽だろう。
そんな親不孝言ってどうする。
こんなこと、まだ思う自分がいる。
こんなせめぎ合いの中で生きる自分がいる。

変わらんなあ、私。