ここのところの寒暖差と、花粉やら黄砂やらの攻撃もあって、少し油断をすればダダダと坂を転げ落ちそうな不安にかられる。

母の家に行き朝食の用意をして、後片付けもすませ、リハーサルに出かける。
背中が寒いので、気を張る。
今風邪を引くわけにはいかない。

スタジオにはもうタブレット純さんも来られている。
タブレットさんは、どこでもタブレットさんで、同じ水面のような佇まいではあるが、なんせ初めてのバンドメンバー、そして初めてご一緒のコンサートということもあって、ちょっと緊張気味ではある。
それは私も同じで、本当にしばらくぶりの歌もあり、記憶を辿ろうにも、その記憶自体が信用ならない。

この頃、先輩のかたがたの苦労だったりが、わかる気がしてきた。
その反対に、それらを克服して唄う素晴らしさもわかってきて、歌い手が辿る線上の、その端っこを今歩いているのだなあと思うと、胸が一杯になる。

タブレットさんは、まだまだ若く、バンドメンバーもまた同じ。
そのエネルギーを吸い込みながら、一緒に唄う。
ところが、おそろしいことに、もう終わった曲の次の曲で、前の歌詞が口をついて出た。
違う伴奏で違う歌を歌っている。
それにしばし気づかない自分に驚いた。
変だなと思いつつ、周りが笑うのでハッと我にかえる。

これってもうヤバいんじゃないかなあ、と思う。
でも、ヤバくてもヤバくなくても、コンサートはやってくる。
ちょっともうちょっと何とかがんばりたい。
キュウと心が縮む。


リハーサル終わりでタブレットさんが、スケジュール表のスキマに描いた絵を見せてくれた。
私たち二人とデカい猫が並んでいる。
一瞬印刷物かと思うほど緻密。
空間があるとすぐ絵を描いてしまうというタブレットさんに、ホッとする。
まさにタブレットマジック。

二人のコンサートまであと少し。
昭和歌謡とシャンソンと。
楽しみになってきたぞ。