れいの背中叩かれ事件から。
次は尻もちをついた、そして次は微熱が出たと、ホームから次々と連絡が入る。

どんな些細なことでも、家族に報告をせねばならないのだ。
だからホームからの着信はドキドキする。

微熱を心配していたが、その翌日の昨日はもう回復。さっそく父親のもとに向かう。
どうやら、やはり、父親はそのこともすっかり忘れている。
ベッドで寝ていた一日はなかったことになっている。

父親のぺージはいつも新しい。
別人に思えることもある。
それでいいと思える。
これまでも、大変な時を、この日々新しくなるページに助けられてきた。

傾向と対策をアタマの片隅に置きつつ、今日の父親に向かう。
今日は今日しかない父親だ。
今日の悩み、心配、不安を、受けとるのが私の役割。
人の名前は全て忘れた彼にとって、私と母親だけが世界で唯一の名前のあるニンゲンなのだ。
名前と顔がわかる二人なのだ。
そんなことを思うと、花粉症でなくとも、目がグシュグシュしてくる。

さて。今朝は母親。
これから訪問診療だ。
母のグシュグシュなのは足のスネで、黒く浮腫んだところから、最近は膿のようなものが出てくる。
これまでの処置方法でいいのか、先生に診てもらわねば。

愛おしい。
この気持ちがあるから、救われる。
こんな感情をニンゲンに与えてくれた神さまにありがとう、だなあ。
さて、行くか。