都会に住む者は、雪ですったもんだすると、雪国のかたたちに申しわけないなあと思う。
恥ずかしいなあと思う。

けっこうに積もりゆく雪は、湿って重たい。
雪だるまにも向いていないが、今朝、SNSで渋谷のハチ公の前脚あたりに、もう一匹雪のハチ公が座っている写真を見て、なんだか嬉しくなった。
それも、きっともう崩れてしまっただろうなあ。

「情熱」という名曲がある。
斉藤由貴さんが歌っていた歌で、松本隆さんの詞。
屋根に悲しみ乗せた列車の、で始まる。
これがはなから雪だと人はイメージする。
あれ、でもこれってホントに雪なのと突然のように思い、詞を思い出していくと、二番で「心は雪に閉ざされたまま」という歌詞。
ああ、やっぱりこれは雪の日のシーンだったのだと安心する。

これが松本さんのスゴいところだなあと改めて思う。
雪の日の別れなんだろうけど、そこに事実上の雪は出てこない。
でも、聴く人には、雪が積もった列車がイメージされる。
ふううむ、さすがであると今更に感心する。

だから、この歌、寒い時期に歌いたくなるんだよなあ。
もはや、深層心理的傑作であるなあ。
というわけで、コンサートでも歌おうと思います。

しかし。雪の別れなんて、まあ、なんと辛いこと。
この登場人物のように若い男女でなくとも、このシチュエーションは避けたいところであります。
人生を四季に例えるなら、もはや冬に入った者たちにはなおさら。
しんしんと寒さが沁みます。

あ、もう一つ。
この「情熱」の歌詞の、まだまだスゴいところは、愛が燃えてる、とも書かれていること。
だいたい、このタイトル「情熱」というのが凄すぎる。
寒さと熱さが共存している。

あ、もう出かけねば。
雪で転ばぬよう気をつけねば。