ここ最近。
あれほど風呂好きだった母親が、それをひどく面倒くさがるようになった。
特に寒くなってからは顕著で、それよりヤバいなあと思うのが、何日入っていないかを忘れてしまうことだ。

髪は毎日拭く。
熱くしたタオルで、母親の頭をぐるぐる拭く。
ひゃあ、と騒ぐので、コツンとアタマのテッペンを叩く。
「子供みたいだわねえ」と母親が言う。
本当に子供みたいだ。
私は子育てをしたことがないので、これがその代わりかもしれんと思う。

子供と老人って似てる。
ひと月とか、半年とかで、驚くほど変わる。
子供は背が伸びるが、老人は動けなくなる。
子供と老人の間、変わらぬスピードだった時間が、その前後はまるで違う。
時は均等でも優しくもない。

そうか、こんなに動けなくなるんだ。
このことは、毎日一緒にいる娘にとって、老いの予習になっている。
でも、そんな予習も、今回のような地震災害の前では無力だ。
動けない人を抱えてどうしたらいいのだろう、いや、私自身が助けられる状況かどうかもわからない。

そんなこんなを思うと、苦しいので考えないようにする。
とりあえず、今日を生きようと思う。
世界の地震の一割が日本で起こるという、その国で生きる者たちは、モノの哀れを知り、でも、今を生きようとする。

今年の春は、一刻も早く来てほしいなあ。