石巻の友人から、心が不安定になっているとのメール。
能登地震を目の当たりにして、あの時のことが蘇ってきたのだ。
人は、人の命が失われる現場にいると、傷が残る。
思う以上の深さで、長く。

私も石巻から帰ってきてからの数年は、どうにもならなかった。
心が座りの悪い茶碗のようにコロンコロンと傾く。
あっという間に傾き、それを嘆く。

心のどこかには、涙の泉ができてしまったようで、その泉は枯れることを知らない。
災害でも戦争でも、はたまた日常でも、何かあると、その泉からドクンドクンと涙が流れ出る。
PTSDだと思うことも多かったし、実際そうだった日々も長かったが、今はもうその泉ごと生きている。
人は思うより弱い。すごく弱い。

そして逃げることも覚えた。
あ、これはもう私には重すぎると、逃げる。
そのことの後ろめたさは、捨てた。
逃げる。
これは、とても大切なことかもしれない。とこの頃思う。
手に余ることばかり続く人生で、逃げることは人を救う。
それは決して卑怯なんかじゃなく、自分の心を守るための技でもある。
そんなに人は強くないのだ。

弱虫でいい。
弱虫だから弱虫なりに考え、生きる。
みいいんな、弱虫。
それでいい。