「旅に出るなら夜の飛行機」
っていう出だしの下田逸郎さんの名曲がある。
夜、飛行機に乗ると、自然に口ずさんでいる。

でも、夜の飛行機は怖い。
よくよく考えると目視なしに、空をとんでいるのだ。
レーダーが目の代わりで、それはもう目より正確だろうけど、海外への長い時間など、今この時、この闇の中をものすごい速さで空を飛んでいるのだと思うと、背中がすううと寒くなる。


いや、もっと怖いのが夜の着陸。
大きな空から、針の一点のような滑走路を目指す。
その様子を見ていると、到着が奇跡のように思える。
夜の滑走路には、そこここに光が溢れ、どれがどの光かなどもちろん素人にはわからない。
ここかなあと、その素人はアテを作るのだが、ことごとく裏切られる。
その度、パイロットの人たち、そして管制塔の人たち、その裏で働く大勢の人たちに、尊敬と畏敬を思う。
まったく、大したもんだなあ、命を預かる仕事ってのは、すごいもんだなあ。と、胸が熱くなる。

今回の事故で、その針の一点のような滑走路では、ちょっとしたミスが取り返しのつかないことになるのだと改めて知った。
ちょっとカスった程度など、飛行機には存在しないのだ。
飛行機に「ちょっと」はないのだった。

そう思うと、鳥ではない者が空を飛ぶことが、どれだけとんでもないことかわかる。
あんな重い機体が空を飛ぶのだ。
でも、飛行機は人類の夢の結晶でもある。
飛行場でその発着を見ていると、思うより遥かに心は飛んでいる。
いろんなところに飛んでいる。
切なく飛んでいる。

旅に出るなら夜の飛行機。
こんな時にも、このメロディは切なく浮かんでくるのだものなあ。