しばしの停戦のあと、ガザでは虐殺が続いている。
SNSに流れるその映像の凄惨さに、言葉がない。
人の尊厳などすっとんでしまった、特に子供たちの映像には、怒りと涙が一緒になって、アゴに悪い歯ぎしり状態だ。

昨日は中村哲さんの亡くなって四年という日。
夜、以前ミニシアターでも見たドキュメンタリー映画「荒野に希望の灯をともす」が放送されていた。
私は中村さんほど、世界に誇れる人はいないと思う。
静かに穏やかに、怒りや理不尽と闘い、アフガニスタンの砂漠を緑に変えた姿を見ると、ただ胸を熱くして、自分の中の心の熱を逃してはならぬと、かき抱くように思う。
「悠久の自然と一瞬の人生」と中村さんは言う。
人間は自然の中のただの生き物。
決してそれ以上の、大したものではないということだ。


今年の夏買っていた村上春樹さんの長編小説を、やっと今頃読み始めた。
今回のものは、終わってしまうのが寂しいので、母親の家に置いておき、数ページずつ読む。
ずっと読めない日が続いても、なんてことない。
この小説は、どうも今の私の体温に沿うようなのだ。
(ぜんぜん無理なものも、たくさんあるけど)

そうこうしているうち「壁と卵」と言う喫茶店があることを知った。
イスラエルでの村上さんのスピーチのテーマそのもの。
(大きな壁と卵があるなら、私は卵の立場に立つと言ったもの)
それは圧倒的力を持つイスラエルと、貧しいパレスチナとの対比だった。
賞をくれるイスラエルで、これを発言する勇気も相当なものだが、実際は怖くて仕方なかったと最近語っておられるのも知った。

「壁と卵」という、その喫茶店に行ってみたい。
調べてみるとわりと近い。
面白いのが、お客さまへのお願いというのがあって、匂いのきつい柔軟剤はご遠慮いただきたいとあった。
香りという名の匂いで体調を崩すかたが増えているという今、こういう配慮も出てきたのだと感心する。

みんな弱い生き物。
それこそ「悠久の自然の中の一瞬の人生」。
労わりあい思い合い助け合うしか、生きる道はないのだ。