ハロウィンの日に起きた郵便局立てこもり事件。
知人が、ちょうどそのあたりに住んでいることもあって他人事には思えない。
にしても。驚いた。
犯人は86歳。

昨日、マンション玄関で、顔なじみの男性と会った。
奥さまとお二人で住んでいらして、時々はテニスラケットを自転車のカゴに入れ、「年よりの楽しみだよ」と笑いながら出かけられるスマートな方だった。
その方も、奥さまも、しばらく見ていない。
お元気なんだろうかと案じていた。

なので、ずいぶんと久しぶりの再会。
ずれ落ちそうなマスクを上げながら、「もうダメだよねえ」。
88歳だよ、もうダメだよということだった。

いえいえ、お元気そうですと、自転車で買い物に行く姿を見送る。
ここに越してきてはや二十年を過ぎた。
偉丈夫でダンディなこの方も、すっかりおじいちゃんになった。

で。立てこもりの犯人だが。
86歳で大事件を起こす。
放火や発砲もあり、八時間にも及ぶ立てこもりで、逮捕された時の顔は、もう放心状態。
すべてやりきった感さえある。

これで、彼はおそらく念願の刑務所暮らしになる。
終の住処をやっと手に入れたのだろう。
なんだかなあ、なんだかなあ。
全体力気力を振り絞ったであろう老人の犯罪を、なんとも言えない思いで見る。

などというのも、このところ、前のようにあちこちと用事を重ねると、すっかり疲れてしまう自分になったからだ。
母親の家へと、通いの家政婦状態は変わらないが、一年前ならまだまだ動いたカラダが、夜になるとすっかりダメだ。
ぎいいと古くさい音でもしそうに動かなくなる。
ちょっと楽譜の確認などと鍵盤キーを叩くも、それさえヒイヒイしてすぐに中断。

あーあ。なんだかなあ。
還暦を越すのもけっこう大変だったが、この調子だと古希もヤバそうだ。
人生、坂ばかり。
うむ、そんな実感ですわ。