今朝は帰りの新幹線。
東京に向かっている。

岡山には1922年というから、私の老親より6歳も年長の建物がある。
日銀の岡山支店だった美しいレトロなビル。
そこが壊されることなくホールになった。
ルネスホール。

大正末から昭和の始まりと共に、多くの人々が出入りしていたであろう一階の大きなホールが、今は音楽会や展覧会の会場になっている。
でも、階段や扉やそこここに、一世紀前の香りが残る。
こういう素晴らしさに、なんでもかんでも新しくしてしまう今時の「やり方」は、やっぱり馴染めないと改めて思う。

岡山パリ祭は、素敵だった。
出演者もお客さまも、手に手を重ね合うように歌を歌い奏で、楽しみ合う。
その温かい育むような空気が、ホールいっぱいに満ちる。

すべてを取り仕切った、歌い手のあみさんは司会も兼ね、岡山に輩出される美しい女傑たちの、確かにその系譜を引いているとわかる。
「協賛をいただきに二十件とか会社を回るんですけど、どうしても顔がうつむいちゃうんですよね。でも、そうだそれじゃダメだって、きっちり相手の方の目を見て心を込めてお話しをするようになりました」

文化に対する協賛金ではあるけど、やはりお金にからむこと、どうしてもナーバスになる。
それをしっかり自身を励ましてやり遂げたあみさんは、ひとまわりも大きく見える。

私など、お招きいただきホイホイと歌いにいくだけだけど、こうして、大変なご苦労を重ね開かれたコンサートなのだなあと、しみじみありがたくなる。

あみさんに、お土産をいただいた。
お母さまが庭になった柿で作られた干し柿。
大粒の、柔らかい、滋味豊かな味。
お手紙も添えられていて、それを拝見しながらホテルの部屋で一ついただく。
労わりと励ましの味がする。

みんなこうして、いろんな場所で生きてる。
いろんな所で、いろんな思いで、生きてる。
一人一人なのさ、と思うこともあるが、いやそうじゃない。
みんな生き合ってる。
一人一人だけど一人じゃない。

歌、歌ってて良かった。