母親の訪問診療。
ここのところ、先生一人で来られていた。
看護師不足だったのだ。

でも、昨日は二人を引き連れ三人で。
その一人が女性看護師さん。
そして、もう一人が男性。
胸にある名札を見ると、カタカナ名。
「どちらから」と聞くと「インドネシアです」

まあ、うれしい、大変でしょうが頑張って辞めないでくださいね、と励ます。
ほんとにそうだ。
こうして外国のかたのチカラを借りなくては、この人手不足はどうにもならない。
父親のホームでも、外国人の介護士さんが頑張っている。

日本語大変だったでしょう、敬語ばっかりたくさんあるし。と言うと、困ったような、でもほんとにそうなんだというような笑顔で、そばに立つ先生見上げながら。
「はい、がんばります」


三人が帰ったあと、窓を全開する。
女性看護師さんの柔軟剤の匂いが残っていたからだ。
わずかの時間だったが、なかなか消えない。
こうした匂いは、父親のホームにはない。
消臭といえば、そちらのほうがよほど大変な場所だが、そこにはない。
柔軟剤一般をどうのこうの言うつもりはないが、香り、いや匂いの必要以上に強いものは、人と対する現場には向かない。


前に来ていた看護婦長さんには、そこはかとした香りがあった。
そばに行くと少しだけ香る。
去ればあとかたもない。
ずっとお世話になれると思っていたのに、家庭の事情で辞められてしまった。
小さな花のような香りを、時々懐かしく思い出す。