なんだかんだ言っても、NHKはすごい番組を作る。
昨日のNHKスペシャルは冤罪の話で、冤罪というのが、決して他人事ではないと身震いした。

ある中小企業の作った機械が海外に輸出され、それが生物兵器になっているという疑い。
そんなこと、この機械ではできませんという会社側の説明や実験も、警察公安によって打ち砕かれていく。

このところ「手柄」を上げていない部署の係長は、これを事件にしたい。
手柄を上げ、昇進したいと願う係長と、それに従う部下。
こんなことで、冤罪が起きる。

えっ、まさか、そんなことで。
その「そんなこと」で、三人が逮捕された。
これがコロナ禍の2020年に起きていた。

保身に走る上層部に対し、あまりのことに憤った内部告発の文書が会社に届く。
どこにでも、これって人として許せないと悩む人はいるのだ。
そういう人は、こうして内部告発したり、あるいは自殺してしまう人だっている。

でも、この文書で、局面は変わり、被害者側が逆に損害賠償の裁判を起こす。
逮捕時には黒髪だった社長さんは、眉毛まで白くなっている。

調書もひどいデタラメぶりで、その稚拙さに唖然とする。
その係長という人は、この件で昇進している。
取材から逃げるように去る後姿は、哀れで醜い。
こんな人たち、これまでたくさん見てきたなあ。と既視感。

上層部がきっちりと反省しない限り、自分たちの利益のための冤罪は、これからも繰り返されるだろう、と証言者が言う。
その組織で働く人が言う。

怖いなあ、怖いなあ。
誰にとっても冤罪は遠いことではないのだ。

逮捕されたお一人の方が、怒りと憤りを押し殺すように話される姿が、よりいっそう「組織の怖さ」を伝えていた。