「五年の保証期間が終わります。また工事をお勧めします」
との通知が来たのが、夏の始まった頃だった。

工事はシロアリ工事。
そういえば、作業を終えた男性を見送った記憶がある。
あれは、もう五年前だったのか。

五年かあ。
これから先の五年かあ。
費用も上がっているし、どうしようかなあ、と迷ったものの、今ここに住んでいる母親の心境も思い、再度お願いした。

小雨の中やって来たのは、前回と同じ作業員のかたで、どこか見覚えがある。
床下への入り口となる床下収納庫のフタを開けると。
そこは五年前のまま。
梅酒などを作っていた大きなビンだらけ。
よくもまあ、こんなにと思うほどで、私はその全部の廃棄にかかる。
家の片付け、終活作業がこうして突然始まった。

シロアリ駆除作業は二時間ほど。
丁寧に仕事を終えた作業員のかたが、また床下収納庫のフタを戻す。
なあんにもなくなった収納庫だ。

「また五年後にうかがいます」
まだ若いその人の目を、思わずじっと見てしまう。
五年後なんて生きてるかどうか、そんな言葉を慌てて飲み込む。

「五年後には、私はもういないねえ」
夕ご飯を食べながら母親が言う。
五年前には、元気に作業を見ていた父親もいない。

五年は長い。遥かだ。
五年後を、当たり前に約束できるのが若さなんだろうなあ。

大小さまざまな空き瓶が、ゾロリと並んだ。
全部燃えないゴミの日に出さねば。
家の終活は、これからも続くのだなあ。
がんばろ。