夕方、雨が突然のように強くなったころ、渋谷のスタジオに行く。
FMラジオの番組収録を終え、そのあたりをウロウロすると、ああ、ここらあたりって宮下公園があった場所だとわかる。

テニスコートなどのある、土も緑も豊かな場所で、公園独特の「ゆるさ」から、いっときはホームレスの人たちがブルーシートで暮らしていた。

それを撤去し、今は商業施設「宮下パーク」になっている。
渋谷はこのように、一回も入ったことのない商業施設だらけになった。
それはそれで時の流れといってしまうしかないのだろうが、残念なのは風の流れだ。

大きな建物が隙間なく建つことで、それまでそこを吹き抜けていた風が止まってしまう。
宮下公園は、線路沿いでもあったので、まさにそれまで風の通り道だった。
線路の向こうとこっち、風が行き来していた。

松本隆さんが生まれ育った渋谷近辺を「風街」と呼んだ。
起伏のある地形は、さまざまな風を呼び、感情を生んだ。
そんな風はもう、ない。
ただ、ビル風が吹き抜ける。

風通しが良い。
この言葉のもつ意味は深い、といまさらに思う。