夕方近く。スーパーに行く。
薬屋さんにも寄って、気忙しい。
と。
どどんどどんと音がする。
見ると、阿波踊りの「連」の一つが歩道を練り歩いている。
デモンストレーションらしい。

あ、あ、あ。
そうだ、今日も阿波踊りだ。
もうカラダもココロもきついから、阿波踊りはカンケーないやと思っていたはずが。
その音、姿に、どどどどと胸がわななき、涙が出てくる。
ああ、そうだった、コロナ前には、この人たちの音が聞こえる方向へ、まるでハーメルンの笛吹きに従う子供たちのように吸い寄せられて行ったんだった。
魂が抜かれたように、ただ音を目指して歩いて行ったんだった。

夜。
母親の夕食の後片付けを終え、阿波踊りの音の方に向かう。
前日は、気力もなく地下鉄に入ってしまったのが、昨日は違う。
私に今必要なのは阿波踊りだいっ。

阿波踊り阿波踊り。
交通規制がかかり、なかなかたどり着けないが、もうすでに、魂は抜かれてしまっている。
音の方へ音の方へ、そしてやっと沿道へ。

それから一時間。
ひゅううと歓声をあげ、手を叩き。

喜び、悦び、歓び。
踊る阿呆に見る阿呆が、爆発する。
「よろこび」に爆発する。
コロナの空白を越え、みんなが爆発する。

「パパと一緒によく行ったわあ」
母親が言う。
ぞういえば、両親との三人でビール片手に見ていたことも思い出した。
そして今は一人。

また来年。
魂抜かれに、また来よう。
生きてることを確かめに、また来よう。